役員退職慰労金の支払拒否に対して回収に至った事例
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役員退職慰労金の支払拒否に対し、法的手続きにより回収に至った事例
事案の概要
本件は、非上場の同族会社において、長年代表取締役として経営に携わってきた相談者が、経営方針をめぐる対立を契機として突然解任され、その後、役員退職慰労金の支払を一切拒否された事案です。
会社側は、
「株主総会決議が存在しない」
「役員退職慰労金規程が整備されていない」
「業績が悪化している」
といった理由を挙げ、役員退職慰労金の支払義務自体を否定していました。
相談者は、過去に退任した他の役員に対しては役員退職慰労金が支給されていたことを把握していましたが、自身に限って支払が拒否されている状況に強い疑問と不公平感を抱き、当事務所に相談されました。
会社側の主張と問題点
会社側の説明は、形式的には一定の理由付けがなされているように見えましたが、実務的に検討すると、以下の点に重大な問題がありました。
- 過去の役員退任時には、株主総会決議を形式的に整備せずに支給が行われていた
- 相談者の就任時および在任中に、退任時には役員退職慰労金が支給されることを前提とした説明や運用がなされていた
- 解任に至る経緯について、相談者側に重大な帰責性は認められなかった
- 会社の財務状況から見て、役員退職慰労金の支給が直ちに不可能といえる状況ではなかった
これらの事情から、単に「決議がない」「規程がない」という理由のみで役員退職慰労金の支払義務を否定することには、無理があると判断されました。
当事務所の対応と法的構成
当事務所では、本件を「会社の裁量による支給の問題」として整理するのではなく、役員退職慰労金を金銭債権として法的に請求できるかという観点から検討を行いました。
具体的には、以下の点を中心に事実関係と証拠関係を整理しました。
- 就任時・在任中・退任時の説明内容を示す資料(議事録、社内文書、電子メール)
- 過去の役員退任時における支給実績
- 役員報酬体系および退任条件との整合性
- 解任の経緯およびその合理性
- 支払拒否が信義則に反すると評価できる事情の有無
これらを踏まえ、役員退職慰労金は実質的に対価性を有し、支給が予定されていた金銭債権であるとの構成を組み立て、会社側に対して法的請求として整理した書面を提示しました。
結果と解決内容
会社側は当初、従前どおり支払義務を否定していましたが、
当事務所が提示した法的構成および証拠関係を精査した結果、訴訟に移行した場合のリスクを認識するに至りました。
その後、協議を重ねた結果、役員退職慰労金の相当額について支払を行う内容で合意が成立し、相談者は現実に金銭を回収することができました。
本件は、株主総会決議や明文規程が存在しない場合であっても、
事案の構造と資料の積み上げ次第で、役員退職慰労金の回収が可能であることを示す典型例といえます。
本事例から得られる実務上のポイント
本件から得られる実務上の重要な示唆は、以下のとおりです。
- 役員退職慰労金は、形式的な決議や規程の有無だけで結論づけるべきものではない
- 過去の運用実態や説明内容は、法的評価において重要な意味を持つ
- 支払拒否が続いている場合でも、早期に法的整理を行うことで回収可能性は大きく左右される
- 「もう支払われないもの」と放置することが、結果として不利に働くことがある
まとめ
役員退職慰労金の支払拒否は、同族会社や非上場会社、経営権争い、M&A後の支配構造変更などの場面で繰り返し発生しています。
しかし、支払拒否がなされているからといって、直ちに回収不能と判断すべきではありません。
事案ごとに事実関係と資料を精査し、適切な法的構成を行うことで、役員退職慰労金の徹底回収が可能となるケースは少なくありません。
役員退職慰労金の支払拒否に直面している場合には、早期に専門的観点からの検討を行うことが重要です。
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