役員退職慰労金を「払う気はない」と明言された事例
お困りではありませんか?
役員退職慰労金を「払う気はない」と明言された事案において、徹底交渉により回収に至った事例
事案の概要
本件は、非上場のオーナー会社において、約十五年間にわたり代表取締役として会社経営を担ってきた相談者が、オーナー一族との関係悪化を契機に、突然代表取締役を解任され、その直後から役員退職慰労金の支払を全面的に拒否された事案です。
相談者は、創業者であるオーナーの高齢化に伴い、実質的に会社の経営を一手に引き受け、売上の拡大や財務体質の改善に貢献してきました。
在任中、役員退職慰労金について明確な規程は存在していなかったものの、「最後はきちんと退職慰労金を支払う」という説明を繰り返し受けていたという経緯がありました。
しかし、オーナー一族の一部と経営方針をめぐって対立が生じた結果、臨時株主総会が開催され、相談者は解任されました。
役員退職慰労金支払拒否に至る経緯
解任後、相談者が役員退職慰労金の支払について確認したところ、会社側は次のように述べました。
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「株主総会決議がない以上、支払義務はない」
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「今後は一切支払うつもりはない」
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「弁護士に相談しても無駄だ」
さらに、オーナーは個人的な感情を隠そうともせず、
「経営者として信用できなくなった以上、金を払う理由はない」
といった発言まで行っていました。
その後、相談者からの連絡に対しては、電話にも出ず、電子メールにも一切回答しない状態となり、いわゆる**「無視・塩漬け」**の状況に移行しました。
相談者の置かれた状況
相談者は、代表取締役を解任されたことにより、会社への影響力を完全に失い、社内資料や過去の議事録にもアクセスできない立場に置かれました。
また、長年会社経営に専念してきたため、退任直後の生活基盤にも不安を抱えており、
「このまま時間が経てば、本当に何ももらえなくなるのではないか」
という強い危機感を持って当事務所に相談されました。
当事務所の対応と実務判断
当事務所では、本件を単なる感情的対立の問題としてではなく、役員退職慰労金が実質的にどのような性質を有していたかという点から整理しました。
具体的には、次の点を重視しました。
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在任期間の長さおよび会社への貢献度
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就任時および在任中に繰り返されていた退任時処遇に関する説明
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過去に退任した役員への支給実態
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解任に至る経緯において、相談者側に重大な背信行為等が認められないこと
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支払拒否が、オーナーの感情的対立に強く依拠していること
これらを踏まえ、役員退職慰労金は、裁量的恩恵ではなく、実質的には退任の対価として予定されていた金銭であるとの構成を採りました。
交渉過程と転機
当事務所名義で法的構成を整理した書面を送付したところ、当初、会社側は強硬な姿勢を崩しませんでした。
しかし、
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訴訟に移行した場合に想定される争点
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過去の支給実態が裁判上どのように評価され得るか
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オーナー側の発言や対応が不利に評価される可能性
を具体的に指摘したところ、会社側の対応に変化が生じました。
最終的には、「長期化は避けたい」という会社側の判断もあり、協議の場が設けられることとなりました。
解決結果
協議の結果、当初「一円も払わない」と明言していた会社側は態度を改め、
役員退職慰労金として相当額を支払う内容で合意が成立しました。
相談者は、解任直後には一切の支払を期待できない状況に置かれていましたが、
結果として、現実に金銭を回収することができました。
本事例の実務的意義
本件は、次の点で示唆に富む事例です。
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会社側が感情的に「払わない」と言い切っている場合でも、法的整理により状況は変わり得る
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無視・塩漬けの状態が続いていても、早期に動くことで交渉の主導権を取り戻せる可能性がある
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役員退職慰労金は、形式論だけで切り捨てるべき問題ではない
まとめ
役員退職慰労金の支払拒否は、オーナーの感情や社内対立が直接的な原因となっているケースが少なくありません。
そのような場合であっても、事実関係と資料を冷静に整理し、法的構成として組み立てることで、回収に至る余地は残されています。
「もう話し合いは無理だ」「完全に無視されている」
そのような段階であっても、直ちに諦める必要はありません。
お困りではありませんか?


