役員退職慰労金を「裏切り者には払わない」と拒否された事案
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役員退職慰労金を「裏切り者には払わない」と人格否定を伴って拒否された事案において、徹底対応により回収に至った事例
事案の概要
本件は、非上場のオーナー会社において、約二十年にわたり役員として在任し、直近十年間は代表取締役として会社経営を担ってきた相談者が、後継者問題を契機として突然排除され、役員退職慰労金の支払を全面的に拒否された事案です。
相談者は、創業者であるオーナーの信任を得て長年経営を任されており、売上拡大、金融機関対応、人事制度の整備など、会社の中核業務を一手に担っていました。
在任中、役員退職慰労金について明文化された規程は存在しませんでしたが、歴代の退任役員には例外なく役員退職慰労金が支給されており、相談者自身も当然に支給される前提で処遇を受けていました。
排除に至る経緯と会社側の態度
オーナーの高齢化に伴い、後継者としてオーナーの子が経営に関与するようになったところ、経営方針や人事をめぐって相談者との間に軋轢が生じました。
その後、相談者は臨時株主総会において突然解任されましたが、解任理由として示された内容は抽象的かつ曖昧であり、具体的な背信行為や業務上の不正を示す事実は一切存在しませんでした。
解任後、相談者が役員退職慰労金について確認したところ、会社側は次のように述べました。
- 「裏切った人間に払う金はない」
- 「会社を私物化しようとした」
- 「退職慰労金を請求する資格はない」
これらの発言は、事実関係に基づく説明ではなく、人格評価や感情的非難を前面に出したものでした。
事実の歪曲と圧迫的対応
さらに会社側は、相談者が退任後に役員退職慰労金を請求する動きを見せると、次のような対応を取りました。
- 過去の経営判断を切り取って「不適切経営」と主張する
- 社内で相談者に関する否定的な噂を流す
- 「請求を続けるなら責任追及も検討する」と示唆する
実際には、これらの主張を裏付ける客観的証拠は存在せず、役員退職慰労金請求を断念させるための圧迫的対応に過ぎないものでした。
相談者は、長年尽くしてきた会社からこのような扱いを受け、
「自分が積み上げてきたものが全て否定されてしまった」
という強い精神的ショックを受けていました。
当事務所の初期判断
当事務所では、会社側の主張を精査した結果、
本件は経営上の責任追及を装いながら、実態としては後継者による排除と感情的対立が原因である
と判断しました。
特に重視したのは、以下の点です。
- 相談者の在任期間および会社への実質的貢献
- 歴代役員への一貫した役員退職慰労金支給実績
- 解任理由と実際の業務内容との乖離
- 会社側の発言内容が事実評価ではなく感情的非難に終始している点
- 退任後の圧迫的対応が、請求権行使を妨害する性質を有している点
これらを踏まえ、役員退職慰労金は退任の対価として予定されていた金銭債権であり、人格評価や感情論によって左右されるものではないとの法的構成を採用しました。
交渉戦略と転換点
当事務所は、会社側の感情的言動に正面から応酬するのではなく、
事実関係と資料に基づく整理を徹底し、法的評価に耐える主張のみを提示しました。
具体的には、
- 過去の役員退任時の支給資料
- 在任中の業績推移と職務内容
- 解任理由の不合理性
- 圧迫的対応が裁判上どのように評価され得るか
を整理した書面を送付しました。
その結果、会社側は次第に主張を後退させ、
「一切支払わない」という当初の姿勢を維持することが困難になりました。
解決結果
最終的に、会社側は訴訟リスクを考慮し、
役員退職慰労金として相当額を支払う内容で合意に至りました。
相談者は、解任直後には「一円ももらえない」と思い込まされていましたが、
結果として、現実に金銭を回収することができました。
本事例の実務的示唆
本件は、次の点を明確に示しています。
- 役員退職慰労金の支払拒否が、事実ではなく感情や人格否定に基づいているケースは少なくない
- 会社側の強硬姿勢や圧迫的対応は、法的には必ずしも有利に評価されない
- 生々しい対立がある事案ほど、冷静な法的整理が回収可能性を左右する
まとめ
役員退職慰労金の支払拒否は、経営判断の問題ではなく、人間関係の破綻として発生しているケースが多いのが実情です。
しかし、感情的対立が激しい事案であっても、法的請求として整理し直すことで、状況は変わり得ます。
「裏切り者だから払わない」
「信用できない人間に金は出せない」
このような言葉が向けられている場合であっても、役員退職慰労金請求を直ちに諦める必要はありません。
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