役員退職慰労金の算定式と功績倍率の考え方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記事番号 | RL34(算定式と功績倍率。巨大記事・中核柱記事) |
| 表題 | 役員退職慰労金の算定式と功績倍率の考え方 |
| スラッグ | taishokuirokin-santeishiki-kouseki-bairitsu |
| 想定ディレクトリ | /archives/taishokuirokin-santeishiki-kouseki-bairitsu/ |
| 主キーワード | 役員退職慰労金 算定 功績倍率 |
| 検索意図 | 役員退職慰労金の金額がどのような計算で決まるのか、功績倍率とは何かを知りたい |
| 送客先ランディングページ | 3-10 提示された役員退職慰労金の金額が低くお困りではありませんか(/kouseki_bairitsu_teigaku/。主) |
| 作成年月日 | 令和8年8月19日 |
| 版 | 第1版(v01) |
| メタディスクリプション | 役員退職慰労金の算定式と功績倍率の考え方について、一般に用いられる算定の構造、各要素の意味と確認の方法、規程がない場合の算定、功労加算及び減額、提示額を検証する視点を、根拠の裏付けを重視して整理します。 |
役員退職慰労金の算定式と功績倍率の考え方
役員退職慰労金の金額がどのように決まるのかは、支払を求める側にとって最初の関心事です。会社から金額を提示されても、その算定の根拠が示されなければ、高いのか低いのかを判断することができません。本記事では、支払を求める側の元役員及びその御遺族に向けて、算定の構造と、各要素をどのように確認するかを整理します。
1 結論 算定は「規程の定めに当てはめる」作業です
役員退職慰労金の額は、法律に算定方法が定められているものではありません。定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めるものとされているにとどまります(会社法第361条第1項)。
したがって、金額は、会社の役員退職慰労金支給規程が定める算定方法により決まります。規程がない場合には、過去の支給実績から読み取られる基準によることになります。いずれにしても、金額の主張は、会社ごとの具体的な定め又は実績に裏付けられている必要があります。
| 状況 | 算定の根拠 |
|---|---|
| 支給規程がある | 規程の定める算定方法によります |
| 支給規程がない | 過去の支給実績から読み取られる基準によります |
| 規程も実績もない | 在任期間、役位、功績の内容等を踏まえた主張を組み立てます |
| 個別の合意がある | 合意の内容によります |
2 一般に用いられる算定の構造
実務において多く用いられているのは、退任時の月額報酬に、在任年数と、役位に応じた倍率を乗じる方法です。この倍率が功績倍率と呼ばれます。
| 要素 | 内容 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 退任時の月額報酬 | 退任の直前における役員報酬の月額 | 源泉徴収票、報酬支払の記録、株主総会議事録 |
| 在任年数 | 就任から退任までの年数 | 登記事項証明書 |
| 功績倍率 | 役位に応じて定められる倍率 | 役員退職慰労金支給規程 |
| 功労加算 | 特別の功労がある場合の加算 | 規程の加算条項、過去の加算の実績 |
倍率の水準は会社ごとに定められるものであり、一律の数値があるわけではありません。本記事では、確認済みの根拠のない具体的な数値を掲げることはいたしません。御自身の会社における倍率は、支給規程を確認することにより把握することができます。
3 役位ごとに算定する方式
在任中に役位が変わっている場合には、役位ごとの在任年数に、それぞれの役位に対応する倍率を乗じ、これを合算する方式が用いられることがあります。
| 役位 | 在任の期間 | 算定の考え方 |
|---|---|---|
| 取締役 | 就任から昇任までの期間 | 当該期間について取締役の倍率を適用します |
| 専務取締役等 | 昇任から次の昇任までの期間 | 当該期間について対応する倍率を適用します |
| 代表取締役 | 代表権を有していた期間 | 当該期間について対応する倍率を適用します |
| 会長等 | 代表権を退いた後の期間 | 規程の定めにより判断します |
この方式が採られている場合、役位ごとの在任期間を正確に把握することが金額に直結します。登記事項証明書により、就任、昇任、代表権の得喪、退任の各年月日を確認します。
4 退任時の月額報酬に関する争点
算定の基礎となる報酬の額をめぐっては、次の点が争点となりやすいものです。
| 争点 | 内容 | 検討の視点 |
|---|---|---|
| 退任直前の減額 | 退任の前に報酬が引き下げられていた | 減額に同意していたかを確認し、していなければ争います |
| 使用人分の給与 | 報酬に使用人としての給与が含まれているか | 規程が定める基礎を確認します |
| 賞与の扱い | 賞与を月額に換算して含めるか | 規程の定めによります |
| 現物の給付 | 社宅、社用車等の利益を含めるか | 規程の定め及び過去の運用によります |
| 報酬の未払 | 報酬が支払われていない期間がある | 本来の額を基礎とすべき旨を主張し得ます |
最も多く見られるのが、退任の直前における報酬の減額です。報酬が引き下げられていると、退職慰労金の額も比例して下がります。減額に同意していなかったのであれば、その点自体を争う余地があります。株主総会の決議によって具体的に定められた報酬額は、役員の同意がなければ一方的に減額することができないと解されています。この点は判例法理によります。
5 功労加算及び減額
| 区分 | 内容 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 功労加算 | 特別の功労がある場合に基本額に加算します | 加算条項の要件、上限、過去の適用の実績 |
| 減額 | 在任中の非違行為等がある場合に減じます | 減額条項の要件、上限、決定の手続 |
| 創業者に関する特則 | 創業者について別の定めが置かれることがあります | 規程における特則の有無 |
| 在任期間が短い場合 | 一定年数に満たない場合の定めが置かれることがあります | 最低在任年数の要件の有無 |
6 規程がない場合の算定
支給規程がない会社では、過去の支給実績から算定の方法を読み取ることになります。手順は次のとおりです。
| 段階 | 作業 |
|---|---|
| 第1 | 過去に支給を受けた役員ごとに、退任時の役位、在任年数、支給額を整理します |
| 第2 | 各役員の退任時の月額報酬が判明する場合には、支給額との比を算出します |
| 第3 | 役位ごとに比の水準が揃っているかを確認します |
| 第4 | 揃っている場合には、同じ方法を自らの在任期間及び役位に当てはめます |
| 第5 | 揃っていない場合には、最も近い立場の役員との均衡を主張します |
過去の支給額を把握するためには、計算書類等の閲覧謄写(会社法第442条第3項)、株主総会議事録の閲覧謄写(会社法第318条第4項)、株主としての会計帳簿等の閲覧謄写(会社法第433条第1項)を用いることになります。
7 会社の提示額を検証する
会社から金額が提示された場合には、次の順序で検証します。
| 段階 | 確認事項 |
|---|---|
| 第1 | 算定の根拠となる規程の条項が示されているか |
| 第2 | 用いられた月額報酬の額が正しいか |
| 第3 | 在任年数及び役位が正しく反映されているか |
| 第4 | 倍率が規程の定めどおりか |
| 第5 | 功労加算が検討されているか |
| 第6 | 減額がされている場合、その根拠と幅が相当か |
| 第7 | 過去の他の役員への支給額との均衡が取れているか |
会社が算定の過程を示さずに結論の金額のみを述べる場合には、書面により算定の根拠を示すよう求めます。根拠が示されない限り、提示額の当否を判断することはできません。
8 課税に関する留意
役員退職慰労金の支給に伴う課税関係については、税理士に御確認ください。当事務所は税務の代理を行っておりません。会社が「税務上認められる範囲でなければ支給できない」と述べることがありますが、税務上の取扱いと、会社が役員に対して負う私法上の債務とは別の問題です。この点を混同しないことが重要です。
9 案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 役員退職慰労金支給規程の有無及び算定方法 | 規程の写し、会社への開示の求め |
| 2 | 規程が定める役位ごとの倍率 | 規程の写し |
| 3 | 就任、昇任、代表権の得喪、退任の各年月日 | 登記事項証明書 |
| 4 | 退任時の月額報酬及びその推移 | 源泉徴収票、報酬支払の記録 |
| 5 | 退任直前の報酬の減額の有無及び同意の有無 | 株主総会議事録、往復の書面 |
| 6 | 使用人としての地位の併有の有無 | 辞令、給与の明細書 |
| 7 | 功労加算及び減額に関する条項 | 規程の写し |
| 8 | 過去の他の役員に対する支給額及び算定 | 計算書類、株主総会議事録 |
| 9 | 会社が提示した金額及び算定の説明 | 会社からの書面 |
| 10 | 退任からの経過期間 | 登記事項証明書 |
10 弁護士にご相談いただく意味
金額の交渉において最も重要であるのは、根拠に裏付けられた数値を示すことです。根拠のない金額を主張しても、会社を動かすことはできません。規程の条項、登記による在任期間、報酬の記録という客観的な資料に基づいて算定を示すことにより、交渉は具体的な段階に進みます。
弁護士は、元役員の代理人として、支給規程の入手及び精査、算定の各要素の確認、会社の提示額の検証、過去の支給実績の調査、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、金額に関する交渉、消滅時効の管理、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。
よくあるご質問
質問1 功績倍率とは何ですか。
退任時の月額報酬及び在任年数に乗じる倍率であり、役位に応じて定められるのが通例です。水準は会社ごとに異なりますので、支給規程の確認が前提となります。
質問2 一般的な倍率の目安を教えてください。
会社ごとに定められるものであり、確認済みの根拠のない数値をお示しすることはいたしません。御自身の会社の支給規程及び過去の支給実績から把握することになります。
質問3 規程がない会社です。金額をどう主張すればよいですか。
過去の支給実績から算定の方法を読み取り、これを自らの在任期間及び役位に当てはめる方法が中心となります。実績が乏しい場合には、在任期間、役位、功績の内容を踏まえた主張を組み立てます。
質問4 退任の直前に報酬を下げられました。
算定の基礎が下がりますので、金額に直接影響します。減額に同意していなかった場合には、その点自体を争う余地があります。
質問5 会社が税務上の限度を理由に金額を抑えようとします。
税務上の取扱いと、会社が負う私法上の債務とは別の問題です。もっとも、課税関係については税理士に御確認いただく必要があります。
本記事における非開示事項について
算定の各要素についての主張の立て方、提示額に対する反論の順序、交渉における金額の示し方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、源泉徴収票及び報酬額が分かる資料、株主総会議事録の写し、会社からの提示の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第387条第1項(監査役の報酬等)、第433条第1項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、支給基準に従うことを前提とする取締役会への一任決議の効力、及び株主総会の決議によって具体的に定められた報酬額を役員の同意なく一方的に減額することができないことについては、判例法理によります。算定方法及び倍率は法律に定めがあるものではなく、会社ごとの支給規程又は支給の実績によります。
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