提示された金額が低いと考える場合の検証の手順

項目 内容
記事番号 RL35(提示額の検証手順。主要記事・受任直結記事)
表題 提示された金額が低いと考える場合の検証の手順
スラッグ teiji-kingaku-hikui-kenshou
想定ディレクトリ /archives/teiji-kingaku-hikui-kenshou/
主キーワード 役員退職慰労金 金額が低い 検証
検索意図 会社から提示された役員退職慰労金の額が低いと感じる場合に、どのように検証すればよいかを知りたい
送客先ランディングページ 3-10 提示された役員退職慰労金の金額が低くお困りではありませんか(/kouseki_bairitsu_teigaku/。主)
作成年月日 令和8年8月19日
第1版(v01)
メタディスクリプション 会社から提示された役員退職慰労金の額が低いと考える場合の検証の手順について、算定の根拠を求める書面、各要素の検算、過去の支給実績との比較、会社の説明の類型ごとの反論、受領と異議の留保を整理します。

提示された金額が低いと考える場合の検証の手順

会社から役員退職慰労金の金額を提示され、その額が想定より低いと感じられる場合があります。しかし、感覚のみで「低い」と述べても、交渉は進みません。低いと考える理由を、算定の各要素に分解して示す作業が必要となります。本記事では、支払を求める側の元役員及びその御遺族に向けて、提示額を検証する手順を整理します。

1 結論 結論の金額ではなく、算定の過程を検証します

段階 行うこと
第1 会社に対し、算定の根拠及び過程を書面で示すよう求めます
第2 支給規程を入手し、算定方法を確認します
第3 各要素(報酬額、在任年数、役位、倍率)を検算します
第4 功労加算及び減額の有無を確認します
第5 過去の他の役員への支給額と比較します
第6 相違点を特定し、書面により指摘します

会社が算定の過程を示さない場合には、その事実自体が交渉における材料となります。「金額の根拠を示すことができない提示である」という指摘は、後の手続においても意味を持ちます。

2 算定の根拠を求める書面

会社に対して求める事項は、次のとおりです。

求める事項 内容
適用した規程 役員退職慰労金支給規程の名称及び該当する条項
基礎とした報酬額 算定の基礎とした月額報酬の額及びその根拠
在任年数 算定に用いた在任年数及び役位ごとの内訳
倍率 適用した倍率及びその根拠となる条項
加算及び減額 加算又は減額を行った場合、その根拠及び金額
決定の手続 誰が、いつ、どのような手続により決定したか

これらを求めることは、会社にとって過大な負担ではありません。正当な算定を行っているのであれば、示すことができるはずのものだからです。

3 各要素の検算

3-1 基礎とした報酬額

算定の基礎とした月額報酬が、実際の額と一致しているかを確認します。源泉徴収票及び報酬の振込の記録により検証します。

退任の直前に報酬が減額されていた場合には、減額後の額が基礎とされている可能性があります。減額に同意していなかったのであれば、本来の額を基礎とすべき旨を主張し得ます。株主総会の決議によって具体的に定められた報酬額は、役員の同意がなければ一方的に減額することができないと解されています。この点は判例法理によります。

3-2 在任年数及び役位

登記事項証明書により、就任、昇任、代表権の得喪、退任の各年月日を確認します。会社が用いた在任年数と一致しているかを検証します。

確認事項 誤りが生じやすい点
起算日 就任の年月日ではなく、別の日が用いられていないか
端数の扱い 規程が定める端数の処理と異なっていないか
役位の期間 上位の役位の期間が短く計上されていないか
再任の扱い 任期満了による再任が中断として扱われていないか
使用人期間 使用人としての期間が含まれるか否かの扱い

3-3 倍率

規程が定める役位ごとの倍率と、会社が用いた倍率とが一致しているかを確認します。規程に定めがあるにもかかわらず、これより低い倍率が用いられている場合には、根拠を問うことになります。

3-4 加算及び減額

功労加算の条項があるにもかかわらず適用が検討されていない場合には、その理由の説明を求めます。減額がされている場合には、根拠となる条項と、該当する事実の特定を求めます。

4 過去の支給実績との比較

提示額が低いことを示す最も有力な材料が、過去の他の役員に対する支給額との比較です。次の手順で整理します。

段階 作業
第1 過去に退任した役員の氏名、退任時の役位、在任年数を登記事項証明書により整理します
第2 各役員に対する支給額を計算書類等により把握します
第3 在任年数及び役位が近い役員を選び、支給額を比較します
第4 差が生じている場合、その理由の説明を求めます

支給額を把握するためには、計算書類等の閲覧謄写(会社法第442条第3項)、株主総会議事録の閲覧謄写(会社法第318条第4項)、株主としての会計帳簿等の閲覧謄写(会社法第433条第1項)を用いることになります。

5 会社の説明の類型と反論

会社の説明 反論の視点
会社の業績が悪い 支給規程に業績に関する条項があるかを確認します
先例より支給水準を見直した 見直しの決定がいつ、どの機関により行われたかを問います
他の役員も同水準である 実際の支給額を資料により確認します
税務上の限度がある 私法上の債務と税務上の取扱いは別である旨を述べます
これ以上は株主の理解が得られない 株主総会の決議の状況を確認します
在任中の落ち度を考慮した 減額の根拠及び事実の特定を求めます

6 受領と異議の留保

提示額について争う場合であっても、提示された額を受領すること自体は可能です。もっとも、次の点に注意が必要です。

注意点 内容
清算条項 署名を求められる書面に、他に債権債務がない旨の条項がないか
異議の留保 残額を争う旨を書面により明示します
受領の記録 受領の年月日及び金額を記録に残します
時効の管理 残額についての時効を別途管理します

会社が受領書への署名を求める場合には、その内容を確認したうえで判断してください。清算条項が置かれた書面に署名すると、残額の請求が困難となります。

7 交渉と手続の選択

手段 内容 適する場面
書面による協議 算定の根拠を示し、相違点を指摘します 会社が算定を示す用意がある場合
協議を行う旨の合意 書面により合意し、時効の完成を猶予します 協議が長期化する見込みの場合
調停 裁判所において話合いを行います 当事者間の協議が行き詰まった場合
訴訟 差額の支払を求める訴えを提起します 会社が算定の根拠を示さない場合

8 消滅時効

債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。

会社が金額を提示している場合、その提示自体が債務の承認に当たると評価される余地があります(民法第152条第1項)。提示の書面は保存しておく必要があります。

9 案件で確認すべき事項

番号 確認事項 確認の方法
1 会社が提示した金額及び提示の時期 会社からの書面、電子メール
2 算定の根拠として示された内容 会社からの書面
3 役員退職慰労金支給規程の算定方法及び倍率 規程の写し
4 就任、昇任、代表権の得喪、退任の各年月日 登記事項証明書
5 退任時の月額報酬及び直前の減額の有無 源泉徴収票、報酬支払の記録
6 功労加算及び減額の条項の有無 規程の写し
7 過去の他の役員に対する支給額 計算書類、株主総会議事録
8 金額を決定した機関及び手続 株主総会議事録、取締役会議事録
9 受領を求められた書面の内容 書面の写し
10 退任からの経過期間 登記事項証明書

10 弁護士にご相談いただく意味

提示額が低いという主張は、感覚ではなく、算定の各要素についての具体的な指摘によって初めて説得力を持ちます。規程の条項、登記による在任期間、報酬の記録、過去の支給実績という客観的な資料に基づく検証が必要です。

弁護士は、元役員の代理人として、会社に対する算定の根拠の提示の求め、支給規程の入手及び精査、各要素の検算、過去の支給実績の調査、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、受領に際しての異議の留保、消滅時効の管理、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。

よくあるご質問

質問1 会社が計算を示してくれません。

書面により、適用した条項、基礎とした報酬額、在任年数、倍率を示すよう求めることが第一歩となります。示されない場合には、その事実自体を後の主張において指摘します。

質問2 規程を持っていません。どうすればよいですか。

会社に開示を求めるほか、訴訟において文書提出命令の申立てを行うことが考えられます。

質問3 他の役員の支給額を知りたいのですが。

計算書類等の閲覧謄写の請求(会社法第442条第3項)、株主総会議事録の閲覧謄写の請求(会社法第318条第4項)などが考えられます。

質問4 提示額をいったん受け取ってもよいですか。

残額を争う旨を明示したうえで受領する方法が考えられます。受領書に清算条項がないかを必ず確認してください。

質問5 どのくらいの差があれば争う価値がありますか。

差額の大きさのほか、根拠の明確さ、資料の状況、会社の資力により判断が異なります。個別に見通しを検討することになります。

本記事における非開示事項について

検証結果の提示の順序及び時期、交渉から手続に移る判断、受領と異議の留保の進め方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、会社からの提示の書面、源泉徴収票、株主総会議事録の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。課税関係については税理士にご確認ください。

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧謄写)、第433条第1項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)

民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第152条第1項(承認による時効の更新)、第166条第1項(債権等の消滅時効)

民事訴訟法 第219条から第223条まで(書証及び文書提出命令)

判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、及び株主総会の決議によって具体的に定められた報酬額を役員の同意なく一方的に減額することができないことについては、判例法理によります。算定方法及び倍率は、会社ごとの支給規程又は支給の実績によります。

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