弔慰金と死亡退職慰労金の区別

項目 内容
記事番号 RL26(弔慰金と死亡退職慰労金の区別。主要記事・受任直結記事)
表題 弔慰金と死亡退職慰労金の区別
スラッグ chouikin-shibo-irokin-kubetsu
想定ディレクトリ /archives/chouikin-shibo-irokin-kubetsu/
主キーワード 弔慰金 死亡退職慰労金 違い
検索意図 会社から支給される弔慰金と死亡退職慰労金がどのように違うのか、両方請求できるのかを知りたい
送客先ランディングページ 3-7 亡くなった役員の遺族が退職慰労金と弔慰金の支払を断られてお困りではありませんか(/shibo_taishoku_izoku/。主)
作成年月日 令和8年8月19日
第1版(v01)
メタディスクリプション 弔慰金と死亡退職慰労金の区別について、性質及び根拠の違い、支給規程における定めの確認、内訳が示されない場合の対応、相続との関係、請求の進め方、資料の集め方を整理します。

弔慰金と死亡退職慰労金の区別

役員が死亡した場合、会社から支給される金銭には、死亡退職慰労金と弔慰金があります。会社から「お渡ししたものが全部です」と説明され、その内訳が明らかでないまま終わってしまう事案が少なくありません。両者は性質の異なるものですので、区別して確認する必要があります。本記事では、支払を求める側の御遺族に向けて、両者の違いと請求の進め方を整理します。

1 結論 性質も根拠も異なり、両方の請求が成り立ち得ます

比較の観点 死亡退職慰労金 弔慰金
性質 在任中の職務執行の対価としての性質を有すると解されています 死亡を弔い、遺族を慰藉する趣旨で支給されるものと解されています
会社法上の位置付け 報酬等に含まれるものとして扱われます(会社法第361条第1項) 報酬等に当たるかは支給の実態により検討を要します
決定の手続 定款の定め又は株主総会の決議を要します 支給規程又は慣行によることが多いといえます
金額の算定 在任期間、役位、報酬額に基づき算定されます 報酬の月額の一定倍数等により定められることがあります
受給権者 相続財産となる場合と受給権者の定めによる場合があります 遺族に対して支給されるものとされることが多いといえます

両者は支給の趣旨が異なりますので、一方が支給されたことは、他方の請求を妨げるものではありません。会社が弔慰金のみを支給した場合には、死亡退職慰労金について別途請求することを検討することになります。

2 支給規程における定めの確認

会社に役員退職慰労金支給規程がある場合、弔慰金に関する定めが同じ規程の中に置かれていることがあります。また、慶弔に関する別の規程が設けられている場合もあります。次の点を確認します。

確認事項 内容
弔慰金の定めの有無 役員に対する弔慰金の定めが置かれているか
算定の方法 報酬の月額の何倍とするか等の定めがあるか
業務上と業務外の区別 死亡の事由により額が異なる定めとなっていないか
受給権者 遺族の範囲及び順位が定められているか
退職慰労金との関係 弔慰金を退職慰労金に充当する旨の定めがないか

最後の点は重要です。規程に「弔慰金は退職慰労金に含める」といった定めが置かれている場合には、両方を重ねて請求することができないことになります。定めの有無を確認せずに交渉を進めると、後に食い違いが生じます。

3 内訳が示されない場合の対応

会社が金銭を支給しながら、その名目を明らかにしない場合があります。この場合には、次の対応を採ります。

対応 内容
内訳の開示の求め 支給された金銭の名目及び算定の根拠を書面で示すよう求めます
支給規程の開示の求め 退職慰労金及び弔慰金の定めを確認します
決議の有無の確認 退職慰労金として支給されたのであれば決議があるはずです
会計上の処理の確認 計算書類における計上の科目を確認します
受領書の記載の確認 署名を求められた書面にどのような記載があるかを確認します

会計上、退職慰労金と弔慰金とは別の科目で処理されるのが通例です。計算書類等の閲覧謄写(会社法第442条第3項)により、いずれの名目で処理されているかを確認できる場合があります。

4 受領に際しての注意

会社から金銭を受領する際、受領書その他の書面への署名を求められることがあります。次の点を確認してから署名してください。

確認事項 内容
名目の記載 弔慰金か、退職慰労金か、いずれとも記載されていないか
清算条項 他に債権債務がない旨の条項が置かれていないか
放棄の記載 その他の請求を行わない旨の記載がないか
相続人の範囲 相続人全員の署名が求められていないか
異議の留保 残額を争う旨を明示できるか

清算条項が置かれた書面に署名すると、その後に死亡退職慰労金を請求することが困難となります。署名を求められた場合には、内容を確認したうえで判断する必要があります。

5 相続との関係

死亡退職慰労金が相続財産となる場合には、相続人が相続分に応じて承継します(民法第896条)。他方、支給規程に受給権者の定めがあり、固有の権利として取得すると解される場合には、相続財産とはならないという考え方が採られることがあります。

弔慰金については、遺族に対して支給されるものとして定められていることが多く、遺族固有の権利と解される余地があります。もっとも、規程の定めの内容及び支給の実態により判断されますので、一律に決まるものではありません。

区分 相続財産となる場合 固有の権利と解される場合
請求できる者 相続人(相続分に応じます) 規程が定める受給権者
相続放棄の影響 放棄した者は請求できません 放棄しても請求し得る余地があります
遺産分割の対象 対象となり得ます 対象とならないと解される余地があります
債権者による差押え 相続財産として対象となり得ます 受給権者固有の財産となります

なお、相続税その他の課税関係については税理士に御確認ください。当事務所は税務の代理を行っておりません。

6 請求の進め方

段階 行うこと
第1 支給規程における退職慰労金及び弔慰金の定めを確認します
第2 既に支給された金銭の名目及び金額を確定します
第3 未支給の部分について、算定した額を示して請求します
第4 株主総会の決議が未了である場合には、決議を求めます
第5 応答がない場合に裁判所の手続を検討します

実務上、弔慰金については比較的円滑に支給される一方、死亡退職慰労金については株主総会の決議を要するため、手続が進まないという状態が生じやすいといえます。弔慰金を受領したことをもって満足せず、退職慰労金についての手続の進捗を確認することが重要です。

7 過去の実績の確認

過去に死亡した役員に対して、弔慰金及び死亡退職慰労金がどのように支給されたかは、有力な参考となります。計算書類等の閲覧謄写(会社法第442条第3項)及び株主総会議事録の閲覧謄写(会社法第318条第4項)により確認することを検討します。

過去に両方が支給された実績があるにもかかわらず、今回は弔慰金のみとされているのであれば、その理由の説明を求めることになります。

8 消滅時効

債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。

弔慰金を受領したことにより問題が解決したものと考え、そのまま年数が経過している事案が見られます。名目が異なる以上、死亡退職慰労金の請求は別に残りますので、早期の確認が必要です。

9 案件で確認すべき事項

番号 確認事項 確認の方法
1 死亡の年月日及び在任中か退任後かの別 戸籍、登記事項証明書
2 在任期間、役位及び死亡時の報酬額 登記事項証明書、源泉徴収票
3 役員退職慰労金支給規程における弔慰金の定め 規程の写し
4 弔慰金を退職慰労金に充当する旨の定めの有無 規程の写し
5 既に支給された金銭の名目及び金額 振込の記録、受領書、会社からの書面
6 受領に際して署名した書面の内容 書面の写し
7 株主総会の決議の有無 株主総会議事録
8 計算書類における計上の科目 計算書類
9 過去に死亡した役員への支給の実績 計算書類、社内の記録
10 死亡からの経過期間 戸籍

10 弁護士にご相談いただく意味

御遺族の事案では、会社から示された金額をそのまま受け入れてしまうことが多くあります。名目が明らかにされないまま支給された金銭について、それが何に対応するものかを確認することは、御遺族が単独で行うには難しい作業です。

弁護士は、御遺族の代理人として、支給規程の入手及び精査、既に支給された金銭の性質の確定、会社に対する内訳の開示の求め、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、未支給部分の請求、消滅時効の管理及び完成猶予の措置、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。

よくあるご質問

質問1 弔慰金を受け取りました。退職慰労金も請求できますか。

両者は性質が異なりますので、別途請求し得ます。もっとも、規程に充当の定めが置かれている場合には結論が異なりますので、規程の確認が前提となります。

質問2 名目が示されないまま入金がありました。

書面により名目及び算定の根拠を示すよう求めることが考えられます。計算書類における計上の科目からも確認できる場合があります。

質問3 受領書に署名を求められています。

清算条項や請求を行わない旨の記載がないかを確認してから判断してください。記載がある場合には、署名の前に御相談いただくことをお勧めいたします。

質問4 相続放棄をしましたが、弔慰金は受け取れますか。

遺族固有の権利と解される場合には受け取り得る余地があります。規程の定め及び支給の実態により判断されますので、個別に検討することになります。

質問5 税金はどうなりますか。

課税関係については税理士に御確認ください。当事務所は税務の代理を行っておりません。

本記事における非開示事項について

既に支給された金銭の性質を確定させる手順、受領と異議の留保の進め方、会社の反論に応じた主張の組み替え方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、被相続人及び相続人の戸籍、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、振込の記録及び受領書の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。課税関係については税理士にご確認ください。

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第387条第1項(監査役の報酬等)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)

民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)、第896条(相続の一般的効力)、第939条(相続の放棄の効力)

判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれることについては、判例法理によります。弔慰金の性質及び受給権者の権利が固有のものであるかは、規程の定め及び支給の実態に照らし、個別の事案ごとに判断されます。

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