減額の程度が相当であるかを争う視点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記事番号 | RL23(減額の相当性。主要記事・受任直結記事) |
| 表題 | 減額の程度が相当であるかを争う視点 |
| スラッグ | gengaku-teido-soutousei-arasoi |
| 想定ディレクトリ | /archives/gengaku-teido-soutousei-arasoi/ |
| 主キーワード | 役員退職慰労金 減額 相当性 |
| 検索意図 | 役員退職慰労金を減額された場合に、その減額の程度が妥当かどうかをどう争えばよいかを知りたい |
| 送客先ランディングページ | 3-6 在任中の落ち度を理由に役員退職慰労金を減らされお困りではありませんか(/gengaku_fushikyu_hikou/。主) |
| 作成年月日 | 令和8年8月19日 |
| 版 | 第1版(v01) |
| メタディスクリプション | 役員退職慰労金の減額の程度が相当であるかを争う視点について、減額の根拠と算定の過程の検証、事実の重大性との均衡、他の役員との比較、手続の適正、部分的な支払の求め方、資料の集め方を整理します。 |
減額の程度が相当であるかを争う視点
役員退職慰労金について、全部の不支給ではなく、一定の割合を減じた額が提示されることがあります。この場合、支給自体は認められているため、争点は「いくら減じるのが相当か」という程度の問題に移ります。全部か無かの争いよりも見通しを立てやすい反面、根拠のない数値のやり取りに陥りやすい場面でもあります。本記事では、支払を求める側の元役員及びその御遺族に向けて、減額の程度を争う視点を整理します。
1 結論 減額の「根拠」「過程」「均衡」の3点を検証します
| 視点 | 問うべきこと |
|---|---|
| 第1 根拠 | 減額の根拠となる条項は何か。要件を満たしているか |
| 第2 過程 | 基本額はいくらか。そこからどのような計算で減額したのか |
| 第3 均衡 | 事実の重大性と減額の幅とが釣り合っているか。他の役員との間で公平か |
会社が減額を提示する際、基本額を示さずに結論の金額のみを述べることがあります。この場合、まず基本額の算定を示すよう求めます。基本額が明らかにならなければ、減額の幅を検討することができません。
2 基本額の算定の検証
基本額は、支給規程がある場合には、規程の定める算定方法によって定まります。一般には、退任時の月額報酬に在任年数及び役位に応じた倍率を乗じる方法が用いられることが多いといえます。この算定の各要素について、次の点を確認します。
| 要素 | 確認事項 |
|---|---|
| 退任時の月額報酬 | 減額された後の額を用いていないか。減額に同意していたか |
| 在任年数 | 起算日及び端数の扱いは規程どおりか |
| 役位 | 各役位の在任期間が正しく反映されているか |
| 倍率 | 規程が定める倍率が用いられているか |
| 功労加算 | 加算条項の適用が検討されているか |
実務上多く見られるのが、退任の直前に報酬が減額されていた事案です。この場合、減額後の月額報酬を基礎とすると、退職慰労金の額が大きく下がります。報酬の減額について同意していなかったのであれば、その点自体を争う余地があります。
3 減額の幅の検証
減額の幅について、支給規程に定めがある場合には、その定めが基準となります。減額の上限が定められている場合、これを超える減額は根拠を欠くことになります。
定めがない場合には、事実の重大性との均衡が問題となります。次の要素が検討の材料となります。
| 要素 | 減額を大きくする方向 | 減額を小さくする方向 |
|---|---|---|
| 行為の性質 | 故意による違法な行為 | 経営判断の誤りにとどまる |
| 損害の有無 | 会社に現実の損害が生じている | 損害が生じていない、又は算定されていない |
| 行為の時期 | 在任期間の全体に及ぶ | 一時期の事情にとどまる |
| 在任中の功績 | 功績が乏しい | 長期にわたり会社に寄与している |
| 会社の対応 | 在任中に警告等がされている | 在任中は何らの措置も採られていない |
| 他の役員との比較 | 他の役員も同様に減額されている | 同様の事情がある他の役員は減額されていない |
4 他の役員との比較
減額の相当性を争ううえで有力な材料となるのが、他の役員との比較です。同様の事情がありながら減額されていない役員が存在する場合には、判断の公平性が問題となります。
比較のためには、過去の支給の実績を把握する必要があります。株主又は債権者として計算書類等の閲覧謄写を請求し(会社法第442条第3項)、株主総会議事録の閲覧謄写を請求します(会社法第318条第4項)。株主であれば、会計帳簿等の閲覧謄写を請求することも考えられます(会社法第433条第1項)。
5 手続の適正
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 決定の主体 | 規程が定める主体により判断されたか |
| 会議体の決議 | 取締役会又は株主総会の決議を経ているか |
| 算定の根拠の提示 | 基本額及び減額の計算が示されたか |
| 本人への説明 | 減額の理由が説明されたか |
| 弁明の機会 | 規程に定めがある場合、機会が与えられたか |
| 調査の実施 | 事実関係の調査が行われたか |
手続に不備がある場合、直ちに減額が無効となるとは限りませんが、判断の合理性を疑わせる事情として位置付けることができます。
6 部分的な支払の求め方
減額の程度に争いがある場合、会社が提示する額については支払を受け、残額について争うという進め方が考えられます。もっとも、次の点に注意が必要です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 清算条項 | 受領に際して署名する書面に、他に債権債務がない旨の条項がないか |
| 異議の留保 | 残額を争う旨を明示して受領する必要があります |
| 受領の態様 | 無条件に受領したと評価されないよう記録を残します |
| 時効 | 残額についての時効の管理を別途行います |
会社が「これで全部である」という趣旨の書面への署名を求めてくる場合には、署名の前に内容を確認する必要があります。一部を受領しつつ残額を争う意思を明確にしておくことが要点となります。
7 交渉と手続の選択
| 手段 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 書面による協議 | 基本額の算定及び減額の根拠の提示を求めます | 催告による時効の完成猶予は6か月にとどまります |
| 協議を行う旨の合意 | 書面により合意し、時効の完成を猶予します | 民法第151条によります |
| 調停 | 裁判所において話合いを行います | 相手方の応諾を要します |
| 訴訟 | 差額の支払を求める訴えを提起します | 減額の相当性が正面からの争点となります |
減額の程度が争点である事案は、全部の不支給の事案に比べ、協議による解決に至りやすい傾向があります。会社も支給自体は認めているためです。もっとも、協議が長引く間に時効が進行しますので、期間の管理は必要です。
8 消滅時効
債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。
会社が減額後の額を提示している場合、その提示自体が債務の承認に当たると評価される余地があります(民法第152条第1項)。提示の書面は保存しておく必要があります。
9 案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 会社が提示した金額及びその内訳 | 提示の書面、電子メール |
| 2 | 基本額の算定の根拠 | 会社への書面による求め、支給規程 |
| 3 | 減額の根拠となる条項及び上限の定め | 役員退職慰労金支給規程 |
| 4 | 減額の理由とされる事実の内容及び時期 | 会社への書面による求め |
| 5 | 退任時の月額報酬及び直前の減額の有無 | 源泉徴収票、報酬支払の記録 |
| 6 | 在任年数及び役位の変遷 | 登記事項証明書 |
| 7 | 減額を決定した機関及び手続 | 株主総会議事録、取締役会議事録 |
| 8 | 他の役員に対する支給額及び減額の有無 | 計算書類、社内の記録 |
| 9 | 受領を求められた書面の内容 | 書面の写し |
| 10 | 退任からの経過期間 | 登記事項証明書 |
10 弁護士にご相談いただく意味
減額の程度をめぐる交渉は、数値のやり取りになりがちです。しかし、根拠のない数値の応酬では解決しません。基本額の算定を確定させ、減額の根拠となる条項と事実を明らかにさせ、他の役員との均衡を示すという順序で進めることが要点となります。
弁護士は、元役員の代理人として、基本額の算定の検証、会社に対する根拠及び算定過程の提示の求め、他の役員との比較のための資料の収集、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、受領に際しての異議の留保、消滅時効の管理及び完成猶予の措置、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。
よくあるご質問
質問1 会社が金額だけを提示し、計算を示しません。
基本額の算定と減額の計算を書面で示すよう求めることが第一歩となります。示されない場合には、その事実自体を後の主張において指摘することになります。
質問2 提示額をいったん受け取ってもよいですか。
残額を争う旨を明示したうえで受領する方法が考えられます。受領に際して署名を求められる書面に清算条項がないかを必ず確認してください。
質問3 規程に減額の上限があります。有利になりますか。
上限を超える減額は根拠を欠くことになりますので、有力な主張となります。規程の文言を正確に確認することが前提となります。
質問4 退任の直前に報酬を下げられました。影響しますか。
退任時の月額報酬を基礎とする算定では、金額に直接影響します。報酬の減額に同意していなかった場合には、その点自体を争う余地があります。
質問5 他の役員は減額されていません。
判断の公平性を問題とする材料となります。過去の支給の実績を計算書類等により確認することになります。
本記事における非開示事項について
基本額の算定を確定させる手順、交渉における主張の提示の順序、受領と異議の留保の進め方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
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ご相談に際しましては、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、会社からの提示の書面、源泉徴収票、株主総会議事録の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧謄写)、第423条第1項(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)、第433条第1項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第152条第1項(承認による時効の更新)、第166条第1項(債権等の消滅時効)、第505条第1項(相殺の要件)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、株主総会の決議によって具体的に定められた報酬額を役員の同意なく一方的に減額することができないこと、及び退職慰労金が職務執行の対価としての性質と功労に報いる性質とを併有すると解されることについては、判例法理によります。減額の程度の相当性は、規程の定め及び事実の内容に照らし、個別の事案ごとに判断されます。
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