株主総会及び取締役会の議事録を確認する方法

項目 内容
記事番号 RL15(代替わりによる反故。主要記事・受任直結記事)
表題 株主総会及び取締役会の議事録を確認する方法
スラッグ gijiroku-etsuran-motoyakuin
想定ディレクトリ /archives/gijiroku-etsuran-motoyakuin/
主キーワード 議事録 閲覧 元役員
検索意図 役員退職慰労金の決議の存否を確かめるために議事録を閲覧する方法を知りたい
送客先ランディングページ 3-4 代替わりの後に先代の役員退職慰労金が反故にされお困りではありませんか(/sendai_shacho_hango/。主)、3-1 決議がされない場合(/ketsugi_miryo_seikyu/。補助)
作成年月日 令和8年8月14日
第1版(v01)
メタディスクリプション 役員退職慰労金の請求において、株主総会議事録及び取締役会議事録を閲覧謄写する方法を解説します。会社法第318条及び第371条の請求権者と要件、裁判所の許可を要する場合、備置きの義務、議事録から読み取るべき記載、拒絶された場合の対応までを整理します。

株主総会及び取締役会の議事録を確認する方法

役員退職慰労金の請求において、最初に確定すべき事実は「決議があったかどうか」です。これを確かめる資料が、株主総会議事録及び取締役会議事録です。本記事では、これらの議事録を閲覧謄写するための方法と、議事録から何を読み取るべきかを整理します。当事務所は役員の側にも会社の側にも立ちますが、本記事は支払を求める側の方に向けたものです。

1 結論 請求権者の要件が議事録の種類ごとに異なります

議事録 請求権者 裁判所の許可 根拠
株主総会議事録 株主及び債権者 不要 会社法第318条第4項
株主総会議事録(親会社社員) 親会社社員 必要 会社法第318条第5項
取締役会議事録(監査役設置会社等) 株主(権利の行使に必要なとき) 必要 会社法第371条第2項、第3項
取締役会議事録(債権者) 役員又は執行役の責任を追及するために必要なとき 必要 会社法第371条第4項

株主総会議事録は、株主でなくても債権者であれば閲覧謄写を請求することができます。他方、取締役会議事録は要件が厳しく、監査役設置会社等においては株主であっても裁判所の許可を要します。この差は、請求の設計に大きく影響します。

2 議事録の備置きの義務

株式会社は、株主総会の日から10年間、株主総会議事録をその本店に備え置かなければならないものとされています(会社法第318条第2項)。また、支店にも、株主総会の日から5年間、その写しを備え置かなければならないものとされています(同条第3項。議事録が電磁的記録をもって作成されている場合等の例外があります)。

取締役会議事録についても、取締役会の日から10年間、その本店に備え置かなければならないものとされています(会社法第371条第1項)。

備置きの義務があるということは、会社が「そのような議事録は存在しない」と述べる場合、その説明自体が会社法上の義務の不履行を意味し得るということです。この点は、その後の主張において意味を持ちます。

3 株主総会議事録の閲覧謄写

3-1 株主として請求する場合

株主は、会社の営業時間内であればいつでも、株主総会議事録の閲覧又は謄写を請求することができます(会社法第318条第4項)。議決権の割合による制限はなく、1株でも保有していれば請求することができます。この点は、会計帳簿等の閲覧謄写の請求(会社法第433条第1項。議決権の100分の3以上を要します)と大きく異なります。

3-2 債権者として請求する場合

債権者も、株主総会議事録の閲覧又は謄写を請求することができます(会社法第318条第4項)。株式を保有していない元役員であっても、役員退職慰労金の支払を求める立場にあることから、会社に対する債権者であると主張して請求することを検討します。

もっとも、会社が債権の存在自体を争っている場合には、「債権者に当たらない」との反論がされることがあります。この場合、請求の可否そのものが争点となり得ます。それでも、請求を行い、会社の対応を記録に残すことには意味があります。

3-3 請求の方法

請求は、会社の本店に対して行います。書面により、対象となる株主総会の時期を特定して求めるのが実際的です。役員退職慰労金の関係では、次の各時期の議事録が対象となります。

対象とする時期 確認する事項
退任した定時株主総会 退任の承認、退職慰労金の議案の有無
退任の前後の臨時株主総会 支給の決議、一任決議の有無
支給規程の制定又は改廃の時期 規程に関する決議
過去に他の役員が退任した時期 過去の支給の決議の内容
直近5年間の定時株主総会 報酬等の総額の決議、支給の議案の有無

4 取締役会議事録の閲覧謄写

4-1 裁判所の許可を要します

監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧又は謄写の請求をすることができます(会社法第371条第2項、第3項)。

債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときに、裁判所の許可を得て請求することができます(会社法第371条第4項)。役員退職慰労金の支払を求めるという目的のみでは、この要件を満たすとは限りません。

なお、監査役設置会社等でない取締役会設置会社においては、株主は、その権利を行使するため必要があるときに、裁判所の許可を要せずに請求することができるものとされています(会社法第371条第2項)。会社の機関設計により結論が変わりますので、登記事項証明書により機関設計を確認する必要があります。

4-2 許可が得られない場合の代替

取締役会議事録の入手が難しい場合には、次の手段を検討します。

  • 訴訟を提起したうえで、文書提出命令の申立てを行う(民事訴訟法第219条から第223条まで)
  • 弁護士会を通じた照会により、決議の有無の報告を求める(弁護士法第23条の2)
  • 株主総会議事録の記載から、取締役会への一任の有無を確認する
  • 計算書類及びその附属明細書から、支給又は引当ての事実を確認する

5 議事録から読み取るべき記載

議事録を入手した後は、次の各点を確認します。

確認事項 着眼点
議案の表題 「役員退職慰労金贈呈の件」等の記載の有無
決議の文言 支給する旨か、支給の枠組みのみか、一任か
一任の相手方 取締役会か、代表取締役か
支給基準への言及 「当社の規程に従い」等の文言の有無
金額の記載 具体的な金額の記載の有無、総額か個別か
支払の時期及び方法 一括か分割か、時期の定めの有無
出席した株主及び議決権の数 定足数及び賛成数
議長及び署名又は記名押印 会社法施行規則の定める記載事項
開催の日時及び場所 実際の開催の有無を検討する材料

「当社の規程に従い」との文言があるかどうかは、決定的な意味を持ち得ます。支給基準に従うことを前提とする一任決議は、一定の要件の下で有効と解されており、この場合、株主総会の決議が存在するものとして、取締役会が金額を決定しないことが争点となるためです。この点は判例法理によります。

6 議事録が存在しない場合又は開示されない場合

6-1 「議事録がない」と回答された場合

備置きの義務がある以上、この回答は会社法上の義務の不履行を意味し得ます。回答を書面で得たうえで、次の資料により決議の存否を推認させる主張を検討します。

資料 示し得る事項
計算書類における役員退職慰労金の計上 支給の決定が行われたこと
役員退職慰労引当金 支給の見込みが会計上認識されていたこと
法人税申告書及びその別表 損金への算入の有無、支給の時期
金融機関に提出された資料 支給の予定
過去に退任した役員への支給の実績 支給の基準及び手続の慣行

6-2 閲覧謄写を拒まれた場合

会社が正当な理由なく閲覧謄写を拒む場合には、閲覧謄写を求める訴えの提起を検討することになります。もっとも、この訴えを先行させると全体の解決が遅れることがありますので、本案の請求との関係で位置付けを検討する必要があります。

7 弁護士にご相談いただく意味

議事録の閲覧謄写は、権利として認められているとはいえ、会社が任意に応じない場合には手続を重ねる必要があります。また、どの時期の議事録を、どの順序で求めるかにより、会社の準備の状況が変わります。

弁護士は、元役員の代理人として、機関設計の確認、請求権の要件の検討、請求書面の作成、裁判所に対する許可の申立て、訴訟における文書提出命令の申立てを行います。

なお、請求の順序及び時期の選択は、当事務所が個別の案件を通じて蓄積してまいりました実務上の知見に属しますので、本記事では詳細を開示しておりません。

よくあるご質問

質問1 株式を持っていませんが、株主総会議事録を見ることはできますか。

株主総会議事録は、債権者も閲覧謄写を請求することができます(会社法第318条第4項)。退職慰労金の支払を求める立場にある元役員は、債権者としての請求を検討する余地があります。会社が債権の存在を争う場合には、この点も争いとなり得ます。

質問2 1株しか持っていません。それでも議事録を見られますか。

株主総会議事録の閲覧謄写の請求には、議決権の割合による制限はありません(会社法第318条第4項)。他方、会計帳簿等の閲覧謄写の請求には、議決権の100分の3以上という要件があります(会社法第433条第1項)。

質問3 取締役会議事録はなぜ裁判所の許可が必要なのですか。

取締役会議事録には、業務執行に関する秘匿性の高い情報が含まれ得ることから、閲覧謄写の要件が厳格に定められています。会社の機関設計により、許可の要否が異なります。

質問4 議事録が実際には開催されていない総会について作成されている場合はどうなりますか。

現実に開催されていない総会について議事録が作成されている場合、決議の不存在が問題となり得ます。他方、株主全員の同意により書面等で決議があったものとみなされる場合もあります(会社法第319条第1項)。記載の体裁と実態の双方を確認する必要があります。

質問5 閲覧謄写にはどのくらいの時間がかかりますか。

会社が任意に応じる場合には数週間で足ります。応じない場合には、裁判所の許可の申立てや訴えの提起を要し、数か月を要することがあります。

8 議事録の写しを取得した後の作業

議事録の写しを取得した後は、次の順序で内容を整理します。

順序 作業
1 時系列に並べ、決議の有無及び内容を一覧にします
2 支給規程との対応関係を確認します
3 過去に退任した役員に関する記載を抽出します
4 記載と計算書類との整合を確認します
5 記載に疑義がある部分を特定します

議事録の記載と計算書類の記載とが整合しない場合、いずれかが実態を反映していないことになります。例えば、支給の決議の記載がないにもかかわらず計算書類に役員退職慰労金が計上されている場合、決議の記録が失われている可能性、又は決議を経ずに支給が行われた可能性があります。いずれであっても、支給の基準が存在したことを示す材料となり得ます。

本記事における非開示事項について

請求の順序及び時期の選択、会社の対応に応じた組み替え方は、株主構成、機関設計、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、登記事項証明書、定款の写し、株主名簿の写し、手元にある議事録の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。

本記事の根拠条文

会社法 第318条第2項・第3項・第4項・第5項(株主総会議事録の備置き及び閲覧謄写)、第319条第1項(株主総会の決議の省略)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第1項・第2項・第3項・第4項(取締役会議事録の備置き及び閲覧謄写)、第433条第1項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)

民事訴訟法 第219条から第223条まで(書証及び文書提出命令)

弁護士法 第23条の2(報告の請求)

判例法理による部分 支給基準に従うことを前提とする取締役会への一任決議の効力については、判例法理によります。個別の事案における適用は、決議の文言及び支給基準の内容により異なります。

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