規程が廃止された後に退任した場合の扱い

項目 内容
記事番号 RL09(支給規程廃止後の退任。周辺記事・専門解説記事)
表題 規程が廃止された後に退任した場合の扱い
スラッグ kitei-haishi-go-tainin-atsukai
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主キーワード 役員退職慰労金 支給規程 廃止
検索意図 役員退職慰労金支給規程が廃止された後に退任した場合でも請求できるのかを知りたい
送客先ランディングページ 3-2 役員退職慰労金の支給規程があるのに会社が支払わずお困りではありませんか(/shikyu_kitei_ari_mibarai/。主)
作成年月日 令和8年8月19日
第1版(v01)
メタディスクリプション 役員退職慰労金支給規程が廃止された後に退任した場合の扱いについて、廃止の手続の適法性、廃止の時期と退任の時期の前後関係、在任期間に対応する部分の主張、廃止後も残る支給の慣行、資料の集め方と消滅時効を整理します。

規程が廃止された後に退任した場合の扱い

「退任の直前に、役員退職慰労金支給規程が廃止されました」「廃止されたので支給はできないと言われました」。このようなご相談をお受けすることがあります。規程の廃止は会社が内部で行う行為ですが、それによって直ちに請求の余地がなくなるものではありません。本記事では、支払を求める側の元役員及びその御遺族に向けて、規程が廃止された事案において何を確認し、どのような主張が考えられるかを整理します。

1 結論 廃止の時期、手続、趣旨の3点を確認します

規程の廃止を理由とする支給の拒絶に対しては、次の3点を順に確認することになります。

確認事項 内容 意味
第1 時期 廃止はいつ行われたか。退任の前か後か 退任後の廃止であれば、既に生じた地位に影響しないという主張が成り立ち得ます
第2 手続 誰が、どの機関の決定により廃止したか 手続に不備があれば、廃止の効力自体を争う余地があります
第3 趣旨 支給を取りやめる趣旨か、基準を改める趣旨か 基準を改める趣旨であれば、新たな基準による請求が考えられます

そのうえで、規程がなくなったとしても、過去の支給実績から支給の慣行が確立していたと主張し得るかを検討します。

2 支給規程の法律上の位置付け

取締役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めなければならないとされています(会社法第361条第1項)。役員退職慰労金は、在任中の職務執行の対価としての性質を有すると解されており、同項の報酬等に含まれるものとして扱われています。この点は判例法理によります。

役員退職慰労金支給規程は、それ自体が役員に対する請求権を直ちに発生させるものではなく、株主総会の決議において一任の前提とされる支給基準として機能するものです。したがって、規程の廃止は、支給基準を失わせる行為として位置付けられます。

もっとも、会社と役員との関係は委任に関する規定に従うとされており(会社法第330条)、報酬に関する取決めが会社と役員との間の合意の内容となっている場合には、会社が一方的にこれを変更することはできないと解する余地があります。この点は、規程がどのような形で個々の役員との関係に取り込まれていたかにより異なります。

3 廃止の時期による違い

3-1 退任した後に廃止された場合

退任の後に規程が廃止された場合には、退任の時点では規程が存在していたことになります。この場合、退任時に既に生じていた地位が、その後の廃止によって失われるかが問題となります。

既に株主総会の決議により具体的な請求権が発生していたのであれば、その後の規程の廃止は当該請求権に影響しません。決議がされていない場合であっても、退任時に有効に存在していた規程を根拠として主張する余地があります。

3-2 退任の前に廃止された場合

退任の前に廃止された場合には、退任時には規程が存在しないことになります。この場合には、在任期間のうち規程が存在していた期間に対応する部分について、既に生じた期待が保護されるべきであるという主張を検討することになります。

あわせて、廃止の趣旨が支給そのものを取りやめるものであったのか、基準を改めるものであったのかを確認します。廃止と同時に新たな規程が制定されている場合には、新たな規程に基づく請求を検討することになります。

3-3 退任が具体的に予定された時期に廃止された場合

特定の役員の退任が予定されている時期に、その役員のみを対象とするかのような形で規程が廃止された場合には、廃止の目的が問題となり得ます。取締役の職務の執行として相当性を欠くという評価がされる余地があります。この点は事実関係の詳細によりますので、廃止に至る経緯の把握が重要となります。

4 廃止の手続の確認

確認事項 内容 資料
決定した機関 株主総会か、取締役会か、代表取締役の決定か 株主総会議事録、取締役会議事録
制定時の手続との対応 制定と同じ機関の決定によっているか 制定時の議事録
規程自体の定め 改廃の手続に関する条項があるか 規程の写し
廃止の効力発生日 いつから効力を生じるものとされているか 議事録、廃止に関する書面
役員への周知 在任していた役員に知らされていたか 社内の通知、電子メール

実務上、規程の廃止が代表取締役の判断のみで行われ、機関の決定を経ていない例が見られます。制定の際に株主総会の決議を経ていた規程を、取締役会の決議のみで廃止することができるかは、規程の位置付けにより検討を要します。手続に不備があれば、廃止の効力自体を争う余地があります。

5 規程が廃止されても残り得る主張

主張 内容 前提となる資料
支給の慣行 規程とは別に、過去の支給実績から基準が確立していた 計算書類、過去の株主総会議事録
個別の合意 退任に際して支給する旨の個別の約束があった 覚書、念書、電子メール、面談の記録
既発生の請求権 廃止の前に既に決議がされていた 株主総会議事録
使用人分の退職金 使用人としての地位に基づく退職金は別の規程による 従業員の退職金規程
廃止の効力の否定 廃止の手続に不備がある 制定時及び廃止時の議事録

これらは択一的なものではありません。資料の状況に応じて複数を並行して主張し、会社の反論に応じて重心を移すのが実際です。

6 使用人を兼ねる取締役の場合

取締役でありながら、部長等の使用人としての地位を併有していた場合には、役員としての退職慰労金と、使用人としての退職金とを分けて検討することになります。役員退職慰労金支給規程が廃止されていても、従業員に適用される退職金規程は別に存在していることがあります。

使用人としての退職金は、退職金規程の適用の有無により判断されます。退職手当の請求権の消滅時効は5年とされています(労働基準法第115条)。適用される規程も、時効の期間も異なりますので、区別して整理する必要があります。

7 資料の入手

資料 入手の手段 根拠
株主総会議事録 株主又は債権者として閲覧謄写を請求します 会社法第318条第4項
取締役会議事録 株主として閲覧謄写を請求します(裁判所の許可を要する場合があります) 会社法第371条第2項、第3項
計算書類等 株主又は債権者として閲覧謄写を請求します 会社法第442条第3項
規程及びその改廃の記録 会社に開示を求めるほか、文書提出命令の申立てを行います 民事訴訟法第219条から第223条まで

規程の写しが手元にない場合には、廃止された規程の内容を確認すること自体が課題となります。過去に交付を受けた資料、就任時の説明資料、社内で共有されていた文書の控えなど、断片的なものであっても保存しておくことが有益です。

8 消滅時効

債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。

規程の廃止を告げられて請求を諦め、そのまま年数が経過している事案が多く見られます。廃止されたという説明を受けた場合であっても、直ちに請求の余地がなくなるものではありませんので、早期に確認を行う必要があります。

9 案件で確認すべき事項

番号 確認事項 確認の方法
1 規程の制定の時期及び制定時の手続 株主総会議事録、取締役会議事録
2 規程の内容(算定方法、対象となる役員の範囲) 規程の写し
3 廃止の時期及び廃止を決定した機関 議事録、廃止に関する書面
4 廃止と退任の前後関係 登記事項証明書、議事録
5 廃止の趣旨及び新たな規程の有無 議事録、新規程の写し
6 廃止に至る経緯及び在任役員への説明 電子メール、社内の通知
7 廃止の前後における他の役員への支給の有無 計算書類、社内の記録
8 個別の支給の約束を示す書面の有無 覚書、念書、往復の書面
9 使用人としての地位の併有の有無 辞令、雇用に関する書面
10 退任からの経過期間 登記事項証明書

10 弁護士にご相談いただく意味

規程の廃止を理由とする拒絶は、一見すると決定的に見えます。しかし、廃止の手続、時期、趣旨のいずれかに検討の余地があることが少なくありません。会社の説明をそのまま受け入れる前に、資料に基づいて確認する作業が必要となります。

弁護士は、元役員の代理人として、規程及びその改廃の経緯の確認、会社に対する資料の開示の求め、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、消滅時効の管理及び完成猶予の措置、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。

よくあるご質問

質問1 規程が廃止されたと言われました。もう請求できないのですか。

廃止の時期、手続及び趣旨により結論が異なります。退任後の廃止である場合や、手続に不備がある場合には、請求し得る余地があります。過去の支給実績を根拠とする主張も併せて検討することになります。

質問2 規程の写しを持っていません。内容を確認する方法はありますか。

会社に開示を求めるほか、訴訟において文書提出命令の申立てを行うことが考えられます。過去に交付を受けた資料や社内の文書の控えが残っていないかも御確認ください。

質問3 代表取締役の一存で廃止されました。争えますか。

制定の際の手続及び規程自体の改廃に関する定めとの関係で、廃止の効力を争う余地があります。議事録その他の資料により手続を確認することが前提となります。

質問4 廃止された後に退任した他の役員には支給されています。

廃止後も支給が行われているのであれば、支給の慣行が残っていることを示す有力な資料となります。支給の時期、対象となった役員、金額を整理して主張することになります。

質問5 使用人としての退職金も支給されないのでしょうか。

従業員に適用される退職金規程は、役員退職慰労金支給規程とは別のものです。使用人としての地位が認められる場合には、退職金規程の適用の有無を別途検討することになります。

本記事における非開示事項について

規程の改廃の経緯を明らかにする手順、請求の順序及び時期の選択、会社の反論に応じた主張の組み替え方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、株主総会議事録及び取締役会議事録の写し、退任前の報酬額が分かる資料、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。課税関係については税理士にご確認ください。

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第330条(株式会社と役員との関係)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧謄写)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)

民法 第166条第1項(債権等の消滅時効)

労働基準法 第115条(時効)

民事訴訟法 第219条から第223条まで(書証及び文書提出命令)

判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、及び支給基準に従うことを前提とする一任決議の効力については、判例法理によります。規程の廃止の効力及び既に生じた地位への影響は、個別の事案における手続及び経緯により判断されます。

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