支給規程の写しを会社から入手する方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記事番号 | RL07(支給規程があるのに未払。主要記事・受任直結記事) |
| 表題 | 支給規程の写しを会社から入手する方法 |
| スラッグ | shikyu-kitei-nyushu-kaiji |
| 想定ディレクトリ | /archives/shikyu-kitei-nyushu-kaiji/ |
| 主キーワード | 支給規程 入手 開示 |
| 検索意図 | 手元にない役員退職慰労金支給規程を会社から取り寄せる方法を知りたい |
| 送客先ランディングページ | 3-2 役員退職慰労金の支給規程があるのに支払われずお困りではありませんか(/shikyu_kitei_ari_mibarai/。主) |
| 作成年月日 | 令和8年8月14日 |
| 版 | 第1版(v01) |
| メタディスクリプション | 役員退職慰労金支給規程の写しが手元にない場合に、これを入手するための方法を段階的に解説します。会社に対する任意の開示の求め、会社法上の閲覧謄写の請求、弁護士会を通じた照会、訴訟における文書提出命令、規程が入手できない場合の代替の立証方法までを整理します。 |
支給規程の写しを会社から入手する方法
役員退職慰労金支給規程は、請求の出発点となる資料です。ところが、退任した役員の手元に写しが残っていない例は多く、会社に求めても「見当たらない」「役員に配布するものではない」と述べて応じないことがあります。本記事では、規程を入手するための手段を、費用と時間の負担が軽い順に整理します。当事務所は役員の側にも会社の側にも立ちますが、本記事は支払を求める側の方に向けたものです。
1 結論 4段階で進めます
| 段階 | 手段 | 費用及び時間の負担 | 強制力 |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 会社に対する任意の開示の求め | 軽い | ありません |
| 第2段階 | 会社法上の閲覧謄写の請求 | 中程度 | 拒絶に対して訴えを提起し得ます |
| 第3段階 | 弁護士会を通じた照会 | 中程度 | 回答が得られない場合があります |
| 第4段階 | 訴訟における文書提出命令の申立て | 重い | 裁判所の命令によります |
規程が入手できない場合であっても、請求を諦める必要はありません。第5節に述べる代替の立証方法があります。
2 第1段階 会社に対する任意の開示の求め
2-1 書面により求めます
まず、会社に対し、書面により、役員退職慰労金支給規程の写しの交付を求めます。書面によることには、次の意味があります。
第1に、会社の対応が記録として残ります。「規程はない」と回答した場合、その回答自体が、後に規程が出てきたときの信用性の問題となります。第2に、回答がない場合、それ自体が資料の偏在を示す事情となり、訴訟における主張の材料となります。第3に、支払を求める意思を明示した記録となり、消滅時効との関係でも意味を持ちます。もっとも、催告による時効の完成猶予の効果は催告の時から6か月にとどまりますので(民法第150条第1項)、これのみに頼ることはできません。
2-2 求める対象を特定します
「支給規程」とだけ述べるのではなく、次の各文書を列挙して求めます。
- 役員退職慰労金支給規程の全文(別表及び附則を含みます)
- 規程の制定及び改廃に関する株主総会議事録又は取締役会議事録
- 直近5年間に退任した役員に対する支給の内容が分かる資料
- 支給に関する株主総会の決議の有無が分かる資料
対象を特定することにより、「そのような文書はない」という回答をする場合にも、会社は文書ごとに答えざるを得なくなります。
3 第2段階 会社法上の閲覧謄写の請求
3-1 用いることのできる請求
支給規程そのものについて、会社法は直接の閲覧謄写の請求権を定めていません。しかし、規程の存在及び内容を裏付ける周辺の資料については、次の請求が可能です。
| 対象 | 請求権者 | 根拠 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 定款 | 株主及び債権者 | 会社法第31条第2項 | 規程が定款に定められている例は多くありません |
| 株主総会議事録 | 株主及び債権者 | 会社法第318条第4項 | 規程の制定又は一任決議の記載を確認します |
| 取締役会議事録 | 株主(裁判所の許可を要する場合があります) | 会社法第371条第2項、第3項 | 規程の制定又は金額の決定の記載を確認します |
| 計算書類等 | 株主及び債権者 | 会社法第442条第3項 | 過去の支給の計上を確認します |
| 会計帳簿等 | 議決権の100分の3以上を有する株主 | 会社法第433条第1項 | 支給の記帳を確認します |
| 株主名簿 | 株主及び債権者 | 会社法第125条第2項 | 株主構成の確認に用います |
3-2 株主でない元役員の場合
株式を保有していない元役員は、株主としての請求をすることができません。もっとも、株主総会議事録及び計算書類等については、債権者にも閲覧謄写の請求が認められています(会社法第318条第4項、第442条第3項)。退職慰労金の支払を求める立場にある元役員は、会社に対する債権者であると主張し得る立場にあります。会社が債権の存在自体を争う場合には、この点も争いとなり得ますが、請求を試みる意味はあります。
3-3 拒絶された場合
会社法上、会計帳簿等の閲覧謄写の請求については、会社が拒むことができる事由が定められています(会社法第433条第2項)。会社が正当な理由なく拒む場合には、閲覧謄写を求める訴えの提起を検討することになります。もっとも、この訴えを先行させると全体の解決が遅れることがありますので、本案の請求との関係で位置付けを検討する必要があります。
4 第3段階及び第4段階 照会と文書提出命令
4-1 弁護士会を通じた照会
弁護士は、受任している事件について、所属する弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができます(弁護士法第23条の2)。この制度により、会社に対して規程の有無及び内容の報告を求める余地があります。
もっとも、照会に対する回答は、法律上、常に強制されるものではありません。会社が回答を拒む場合も現実にはあります。それでも、照会を行った事実と、これに対する会社の対応は、記録として残ります。
4-2 訴訟における文書提出命令
訴訟を提起した後は、文書提出命令の申立てにより、会社が所持する文書の提出を求めることができます(民事訴訟法第219条から第223条まで)。申立てにあたっては、文書の表示、趣旨、所持者、証明すべき事実、提出義務の原因を明らかにする必要があります(民事訴訟法第221条第1項)。
当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができるとされています(民事訴訟法第224条第1項)。会社が規程を隠したまま「規程はない」と主張し続けることには、訴訟上の不利益が伴います。
4-3 各手段の比較
| 手段 | 対象 | 期間の目安 | 不奏功の場合の帰結 |
|---|---|---|---|
| 任意の開示の求め | 制限はありません | 数週間 | 会社の対応が記録に残ります |
| 会社法上の閲覧謄写の請求 | 法定の書類 | 数週間から数か月 | 訴えの提起を検討します |
| 弁護士会を通じた照会 | 制限はありません | 1か月から数か月 | 回答拒絶の事実が残ります |
| 文書提出命令 | 会社の所持する文書 | 訴訟の進行によります | 相手方の主張を真実と認め得る効果 |
5 規程が入手できない場合の代替の立証
規程そのものが入手できない場合であっても、次の資料により、規程の存在及び内容を推認させる主張を組み立てる余地があります。
| 資料 | 示し得る事項 |
|---|---|
| 過去に退任した役員に対する支給の金額及び算定の内訳 | 支給の基準が存在したこと、倍率の水準 |
| 計算書類における役員退職慰労金の計上 | 支給が現に行われていたこと |
| 役員退職慰労引当金の計上の有無 | 支給の基準に基づく見積りが行われていたこと |
| 社内報、就任又は退任の挨拶状 | 役位及び在任期間 |
| 元役員又は元従業員の陳述 | 規程の存在及び運用の実態 |
| 顧問税理士が作成した資料 | 算定の前提とされた基準 |
役員退職慰労引当金が計上されている場合、その計上の根拠となる見積りには、何らかの支給の基準が用いられているのが通常です。計算書類及びその附属明細書の確認は、この観点からも有用です。
6 案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 資料 |
|---|---|---|
| 1 | 現在も株主であるか、議決権の割合はどれだけか | 株主名簿、法人税申告書別表二 |
| 2 | 在任中に規程を見た記憶の有無及びその時期 | 本人の記憶、手帳、電子メール |
| 3 | 規程の写しを保有している可能性のある関係者 | 元役員、元従業員、顧問税理士 |
| 4 | 過去に退任した役員及びその支給の状況 | 登記事項証明書、社内の記録 |
| 5 | 会社の決算書における役員退職慰労金の計上の有無 | 計算書類、法人税申告書 |
| 6 | 退任からの経過期間及び時効の状況 | 登記事項証明書 |
在任中に受領した資料が、自宅に残っていることがあります。取締役会の配付資料、決算の説明資料、就業に関する規程集等に、役員退職慰労金の記載が含まれている例もあります。まず手元の資料を網羅的に確認することが、最も費用のかからない方法です。
7 弁護士にご相談いただく意味
資料の入手は、単に手段を並べれば足りるものではありません。どの手段を、どの順序で、どの時期に用いるかにより、会社の対応が変わります。また、閲覧謄写の請求を先行させることが、かえって会社に準備の時間を与える結果となる場合もあります。
弁護士は、元役員の代理人として、会社に対する開示の求め、会社法上の各種の請求、弁護士会を通じた照会、訴訟における文書提出命令の申立てを、事案に応じて組み合わせて行います。
なお、手段を用いる順序及び時期の選択は、当事務所が個別の案件を通じて蓄積してまいりました実務上の知見に属しますので、本記事では詳細を開示しておりません。
よくあるご質問
質問1 会社が「規程はない」と回答しました。どうすればよいですか。
回答を書面で得たうえで、計算書類における過去の支給の計上、役員退職慰労引当金の有無、過去に退任した役員への支給の実績を確認します。これらにより、支給の基準が存在したことを推認させる主張を組み立てる余地があります。
質問2 株式を持っていませんが、議事録を見ることはできますか。
株主総会議事録及び計算書類等については、債権者にも閲覧謄写の請求が認められています(会社法第318条第4項、第442条第3項)。退職慰労金の支払を求める立場にある元役員は、債権者としての請求を検討する余地があります。会社が債権の存在を争う場合には、この点も争いとなり得ます。
質問3 在任中にコピーを取っておいた規程を使えますか。
在任中に正当に入手した資料を、自らの権利の行使のために用いることは、通常は問題となりません。もっとも、入手の経緯によっては会社から異議が述べられることがありますので、経緯を整理したうえでご相談ください。
質問4 顧問税理士に規程の写しを求めることはできますか。
税理士は会社との契約関係にありますので、元役員の求めに直ちに応じるとは限りません。訴訟の段階では、弁護士会を通じた照会や文書送付の嘱託等の手段を検討することになります。
質問5 規程の入手にどのくらいの時間がかかりますか。
任意の開示に応じる会社であれば数週間で足ります。応じない場合には、手続を重ねることになり、数か月を要することがあります。消滅時効との関係がありますので、資料の入手と並行して時効の管理を行う必要があります。
本記事における非開示事項について
資料の入手のために用いる手段の順序及び時期、会社の対応に応じた組み替え方は、株主構成、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、手元にある社内の資料、源泉徴収票、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。
本記事の根拠条文
会社法 第31条第2項(定款の閲覧等)、第125条第2項(株主名簿の閲覧等)、第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧謄写)、第433条第1項・第2項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求及び拒絶事由)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)
民事訴訟法 第219条から第223条まで(書証及び文書提出命令)、第221条第1項(申立ての方式)、第224条第1項(文書提出命令に従わない場合の効果)
弁護士法 第23条の2(報告の請求)
判例法理による部分 支給規程に基づいて具体的な請求権が生ずるかについては、判例法理によります。個別の事案における適用は、規程の内容及び決議との関係により異なります。
関連するご案内
役員退職慰労金の支給規程があるのに支払われずお困りではありませんか のページで、確認すべき事項と採り得る手続を整理しております。ご相談は事前予約制です。
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