創業者としての功績を金額にどう反映させるか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記事番号 | RL17(創業者の功績の反映。周辺記事・専門解説記事) |
| 表題 | 創業者としての功績を金額にどう反映させるか |
| スラッグ | sogyosha-kouseki-kingaku-hanei |
| 想定ディレクトリ | /archives/sogyosha-kouseki-kingaku-hanei/ |
| 主キーワード | 創業者 役員退職慰労金 功績 |
| 検索意図 | 会社を創業し長年経営してきた立場としての功績を、退職慰労金の金額にどのように反映させられるかを知りたい |
| 送客先ランディングページ | 3-4 創業者が退任したのに役員退職慰労金の支払を断られてお困りではありませんか(/sogyosha_irokin_kyohi/。主) |
| 作成年月日 | 令和8年8月19日 |
| 版 | 第1版(v01) |
| メタディスクリプション | 創業者としての功績を役員退職慰労金の金額にどのように反映させるかについて、支給規程における加算の定め、功績を裏付ける事実の整理、金額の主張の組み立て、会社側の反論への対応、資料の集め方を整理します。 |
創業者としての功績を金額にどう反映させるか
会社を創業し、長年にわたり経営を担ってきた方が退任される場合、その功績を退職慰労金の金額にどのように反映させるかが問題となります。「相応の額を」という言葉のまま具体化されず、後任者との間で折り合いがつかないまま時が経過する、という経過は珍しくありません。本記事では、支払を求める側の創業者及びその御遺族に向けて、功績を金額に結び付けるための整理の仕方を述べます。
1 結論 功績は「加算」の主張として位置付けます
役員退職慰労金の金額は、支給規程がある場合には、規程の定める算定方法によって定まります。一般には、退任時の月額報酬に在任年数及び役位に応じた倍率を乗じる方法が用いられることが多いといえます。具体的な倍率は会社ごとに異なりますので、規程の内容を確認することが前提となります。
創業者としての功績は、この基本的な算定に対する加算として位置付けられるのが通例です。多くの支給規程には、特別の功労があった場合の加算に関する条項が置かれています。
| 金額の構成 | 内容 | 主張の根拠 |
|---|---|---|
| 基本部分 | 退任時の報酬、在任年数、役位により算定される部分 | 支給規程又は支給の慣行 |
| 功労加算 | 特別の功労があった場合に加算される部分 | 支給規程の加算条項、過去の加算の実績 |
| その他 | 個別の合意に基づく部分 | 覚書、往復の書面 |
2 支給規程の加算条項の確認
加算条項が置かれている場合には、次の点を確認します。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 加算の要件 | 「特別の功労があったとき」等の要件がどのように定められているか |
| 加算の上限 | 基本部分に対する割合の上限が定められているか |
| 決定の主体 | 株主総会か、取締役会か |
| 過去の適用の実績 | これまでに加算が行われた例があるか |
| 創業者に関する特則 | 創業者又は会長職に関する定めが別に置かれていないか |
加算条項がない場合であっても、過去に功労を理由とする加算が行われた実績があれば、これを根拠として主張することが考えられます。計算書類等の閲覧謄写(会社法第442条第3項)及び株主総会議事録の閲覧謄写(会社法第318条第4項)により確認することになります。
3 功績を裏付ける事実の整理
「創業者である」という一言では、金額に結び付きません。何をもって功績とするかを、客観的な事実に分解して示す作業が必要となります。
| 区分 | 整理すべき事実 | 裏付けとなる資料 |
|---|---|---|
| 設立及び存続 | 設立の時期、設立に投じた資金、危機を乗り越えた経緯 | 登記事項証明書、設立時の資料、当時の計算書類 |
| 業績 | 在任期間中の売上、利益、従業員数の推移 | 計算書類、社内の資料 |
| 事業の拡大 | 拠点の開設、取扱いの拡大、許認可の取得 | 登記事項証明書、許認可に関する資料 |
| 信用の提供 | 個人保証の提供、個人資産の担保の提供、会社への貸付け | 保証契約書、担保権の登記、計算書類 |
| 取引関係 | 主要な取引先との関係の構築及び維持 | 取引の記録、関係者の陳述 |
| 承継への協力 | 後継者の育成、円滑な引継ぎのための行為 | 社内の記録、往復の書面 |
特に重視されるのが、個人保証及び個人資産の担保の提供です。創業者が長年にわたり会社の借入れについて個人保証を提供してきた事実は、会社の存続に対する具体的な寄与として示しやすいものです。金融機関との保証契約の書面、不動産の登記事項証明書における担保権の設定の記録により裏付けることができます。
4 金額の主張の組み立て
金額の主張は、次の順序で組み立てることが多いといえます。
| 段階 | 作業 |
|---|---|
| 第1 | 支給規程の定める算定方法により基本部分を算出します |
| 第2 | 過去の他の役員に対する支給額と、その在任年数及び役位を整理します |
| 第3 | 自らの在任年数及び役位が他の役員より長く、又は上位であることを示します |
| 第4 | 加算条項の要件に該当する事実を整理して示します |
| 第5 | 過去に加算が行われた実績がある場合には、その水準との均衡を主張します |
ここで注意を要するのは、根拠のない数値を掲げないことです。功績倍率について具体的な数値を主張する場合には、支給規程の定め又は過去の実績という裏付けが必要となります。裏付けのない数値を掲げると、主張全体の説得力を損ないます。
5 会社側から出される反論
| 会社側の反論 | 検討の視点 |
|---|---|
| 在任中に十分な報酬を得ていた | 報酬は在任中の職務の対価であり、退職慰労金とは区別されます |
| 晩年は経営に関与していなかった | 役位及び登記上の地位、実際の関与の内容を整理します |
| 創業者としての功績は会社の利益に還元済みである | 支給規程の定めに従った算定であることを述べます |
| 会社の現在の財務状況では支払えない | 資力は請求権の存否とは別の問題です |
| 在任中の判断により会社に損害が生じた | 具体的な事実の特定を求め、減額の相当性を争います |
「晩年は経営に関与していなかった」という反論は、代表取締役を退いて会長等の職にあった期間について述べられることが多いものです。この場合には、当該期間における役位、報酬の額、取締役会への出席の状況、対外的な役割を整理して反論することになります。
6 個人保証及び貸付金の整理
創業者の事案では、退職慰労金の問題と、個人保証及び会社に対する貸付金の問題とが同時に生じていることが通例です。これらは法律上別個の問題ですが、交渉においては一体として扱われることが多いといえます。
| 項目 | 内容 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 個人保証 | 退任後も保証債務が残っていないか | 保証契約書、金融機関への確認 |
| 担保の提供 | 個人所有の不動産に担保が設定されていないか | 不動産の登記事項証明書 |
| 会社への貸付金 | 役員借入金として計上されていないか | 計算書類、勘定科目内訳明細書 |
| 会社からの借入金 | 役員貸付金として計上されていないか | 計算書類、勘定科目内訳明細書 |
| 社宅及び社用車 | 退任後の扱いが定められているか | 社内の規程、往復の書面 |
会社が退職慰労金と役員貸付金との相殺を主張することがあります。この場合には、貸付金の存否及び金額を確認したうえで、相殺の当否を検討することになります。
7 案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 設立の時期及び創業からの在任期間 | 登記事項証明書 |
| 2 | 役位の変遷及び代表権の有無の推移 | 登記事項証明書 |
| 3 | 退任時及び各時期の月額報酬 | 源泉徴収票、報酬支払の記録 |
| 4 | 役員退職慰労金支給規程の有無及び加算条項 | 規程の写し |
| 5 | 過去の他の役員に対する支給額及び加算の実績 | 計算書類、株主総会議事録 |
| 6 | 在任期間中の業績の推移 | 計算書類 |
| 7 | 個人保証及び担保の提供の状況 | 保証契約書、不動産の登記事項証明書 |
| 8 | 会社との間の貸借の状況 | 計算書類、勘定科目内訳明細書 |
| 9 | 退任の経緯及び後任者との関係 | 当時の資料、往復の書面 |
| 10 | 退任からの経過期間 | 登記事項証明書 |
8 弁護士にご相談いただく意味
創業者の事案では、感情の対立が背景にあることが通例です。功績が認められないという不満と、法律上の請求とを切り分け、資料に基づいて整理することが要点となります。
弁護士は、創業者及びその御遺族の代理人として、功績を裏付ける事実の整理、支給規程及び過去の実績の確認、会社に対する資料の開示の求め、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、個人保証及び貸借の整理、消滅時効の管理及び完成猶予の措置、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。なお、税務に関する事項については税理士に、登記の申請については司法書士に、それぞれ御確認いただくことになります。
よくあるご質問
質問1 創業者であれば金額は当然に高くなるのですか。
当然に高くなるものではありません。支給規程の定める算定方法により基本部分を算出し、加算条項の要件に該当する事実を示すことにより加算を主張する、という組み立てになります。
質問2 功績倍率はいくらを主張すればよいですか。
支給規程に定めがある場合にはその定めにより、定めがない場合には過去の支給実績から読み取ることになります。裏付けのない数値を掲げることは避けるべきものです。
質問3 個人保証を長年提供してきたことは考慮されますか。
会社の存続に対する具体的な寄与として、加算の主張を裏付ける事実となり得ます。保証契約書及び担保権の設定の記録により裏付けることができます。
質問4 会社から貸付金と相殺すると言われました。
貸付金の存否及び金額を確認したうえで、相殺の当否を検討することになります。貸付金の内容に争いがある場合には、その点も併せて整理する必要があります。
質問5 後継者である息子との争いになりそうです。
親族間の事案では、感情の対立が交渉を難しくします。客観的な資料に基づく整理を行ったうえで、協議の進め方を検討することになります。
本記事における非開示事項について
功績を裏付ける事実の選択及び提示の順序、個人保証及び貸借と併せた交渉の進め方、会社の反論に応じた主張の組み替え方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。
- 電話番号 03-6435-8418
- 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、計算書類の写し、報酬額が分かる資料、保証契約書の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第433条第1項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)、第505条第1項(相殺の要件)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、及び支給基準に従うことを前提とする一任決議の効力については、判例法理によります。功労加算の当否及び程度は、支給規程の定め並びに過去の実績により、個別の事案ごとに判断されます。
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