株主総会の開催を求める方法と元役員が採り得る立場

項目 内容
記事番号 RL02(役員退職慰労金の決議未了。主要記事・受任直結記事)
表題 株主総会の開催を求める方法と元役員が採り得る立場
スラッグ soukai-kaisai-seikyu-motoyakuin
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主キーワード 株主総会 開催 求める 元役員
検索意図 会社に株主総会を開かせて役員退職慰労金の議案を上程させる手段を知りたい
送客先ランディングページ 3-1 役員退職慰労金の株主総会決議をしてもらえずお困りではありませんか(/ketsugi_miryo_seikyu/。主)
作成年月日 令和8年8月14日
第1版(v01)
メタディスクリプション 役員退職慰労金の決議を得るために株主総会の開催を求める方法を、株主である元役員と株主でない元役員とに分けて解説します。会社法第297条の招集請求、裁判所の許可を得た招集、議題及び議案の提出、否決された場合の位置付けまで、条文に即して整理します。

株主総会の開催を求める方法と元役員が採り得る立場

役員退職慰労金は、原則として株主総会の決議によって具体的な請求権となります。ところが、会社が総会を開かない、又は開いても議題に上げないという状態が続くことがあります。本記事では、総会の開催そのものを求める手段と、元役員が置かれる立場の違いを整理します。当事務所は役員の側にも会社の側にも立ちますが、本記事は支払を求める側の方に向けたものです。

1 結論 立場によって使える手段が分かれます

元役員の立場 用いることのできる主な手段
議決権の100分の3以上を有する株主でもある 会社法第297条の招集の請求、裁判所の許可を得た自らによる招集、議題及び議案の提出
株主ではあるが議決権要件を満たさない 議題の提案(要件を満たす場合)、会社に対する任意の求め、他の株主との共同
株主ではない 会社に対する書面による求め、支給規程及び支給の慣行に基づく請求、訴訟の提起

まず確認すべきは、自分が現在も株主であるか、株主であるとして議決権をどれだけ有するかという点です。株主名簿及び法人税申告書別表二により確認します。

2 株主である元役員が採り得る手続

2-1 招集の請求

総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にはその割合)以上の議決権を6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(会社法第297条第1項)。公開会社でない株式会社においては、6か月の保有期間の要件は課されません(同条第2項)。非上場の中小会社の多くは公開会社でない株式会社に当たりますので、保有期間の要件が問題とならない場合が多いといえます。

請求は書面によることが望ましく、配達の記録が残る方法を用います。請求書には、目的である事項として「役員退職慰労金支給の件」等を明示し、招集の理由を記載します。

2-2 裁判所の許可を得た招集

招集の請求の後、遅滞なく招集の手続が行われない場合、又は請求があった日から8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にはその期間)以内の日を株主総会の日とする招集の通知が発せられない場合には、請求をした株主は、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集することができます(会社法第297条第4項)。

この手続は、会社が動かないという状態を、株主の側から打開するための正面からの制度です。もっとも、許可の申立てには一定の準備を要し、招集の手続は自ら行うことになります。

2-3 議題及び議案の提出

株主は、一定の要件の下で、株主総会の目的である事項を提案することができ(株主提案。会社法第303条)、また株主総会において議案を提出することができます(会社法第304条)。取締役会設置会社においては、議題の提案について議決権の100分の1以上又は300個以上の議決権を6か月前から引き続き有することが要件とされています(会社法第303条第2項。公開会社でない取締役会設置会社については保有期間の要件は課されません。同条第3項)。

2-4 各手続の比較

手続 根拠条文 主な要件 効果
招集の請求 会社法第297条第1項 議決権の100分の3以上 会社に招集の手続を促します
裁判所の許可による招集 会社法第297条第4項 請求後に会社が応じないこと 自ら総会を招集することができます
議題の提案 会社法第303条 取締役会設置会社では議決権の100分の1以上又は300個以上 総会の目的に加えさせます
議案の提出 会社法第304条 株主であること 総会の場で議案を提出することができます

3 株主でない元役員の立場

株式を保有していない元役員は、会社法上の招集の請求の権利を有しません。この場合に採り得る道筋は、次のとおりです。

第1に、会社に対し、書面により、役員退職慰労金の支給に関する議案を株主総会に上程するよう求めます。法律上の請求権に基づくものではありませんが、会社の対応の記録を残す意味があります。会社が「決議がないため支払えない」と述べながら決議のための手続も採らないという事実の経過は、その後の主張において意味を持ち得ます。

第2に、支給規程が存在する場合、又は過去の支給の実績から支給の基準が確立していたと認められる場合には、決議を経ずに具体的請求権が生じていると主張する余地があります。この点は判例法理により、規程の内容及び決議との関係を個別に検討することになります。

第3に、会社が応じない場合には、訴訟の提起を検討します。訴訟においては、請求原因として、支給規程に基づく請求権の発生、又は支給の合意の成立を主張することが中心となります。

4 議案が否決された場合をどう位置付けるか

株主総会に議案が上程されても、議決権の多数を会社側が握っている場合には否決されることがあります。否決されたという結果は、支払を求める側にとって不利な事実に見えますが、次の点で意味を持ちます。

第1に、「決議がないから支払えない」という会社の説明が、単なる手続の遅れではなく、支給を拒む意思に基づくものであったことが明らかになります。第2に、消滅時効の起算点に関する議論において、権利を行使することができる状態がいつ到来したかを検討する材料となります。第3に、支給規程が存在するにもかかわらず否決された場合には、規程に基づく請求の主張と、決議を要するという会社の主張との対立点が明確になります。

もっとも、否決という結果が生じること自体を避けるべき事案もあります。総会に上程させるかどうかは、資料の状況、株主構成、時効の状況を踏まえて判断すべき事項です。

5 案件で確認すべき事項

番号 確認事項 資料
1 現在の株主構成及び自らの議決権の割合 株主名簿、法人税申告書別表二
2 公開会社でない株式会社に当たるか 定款、登記事項証明書
3 取締役会設置会社であるか 登記事項証明書
4 定款による要件の加重又は緩和の有無 定款
5 直近の定時株主総会の開催状況 株主総会議事録
6 会社への従前の求めの記録 書簡、電子メール
7 退任からの経過期間 登記事項証明書

株主総会議事録は、株主又は債権者として閲覧謄写を請求することができます(会社法第318条第4項)。定款は、株主及び債権者が閲覧等を請求することができるものとされています(会社法第31条第2項)。

6 弁護士にご相談いただく意味

招集の請求は、要件を満たさないまま行っても効果が生じません。また、裁判所の許可を得て自ら総会を招集する場合には、招集の手続そのものに瑕疵があれば、成立した決議の効力が争われることになります。手続を選ぶ段階での判断が、その後の帰趨を左右します。

弁護士は、元役員の代理人として、株主としての地位の確認、要件の検討、請求書面の作成、裁判所に対する許可の申立て、総会の運営、決議後の支払請求までを一貫して行います。

なお、いつ、どの手続を用いるか、会社の反応に応じてどのように順序を組み替えるかは、当事務所が個別の案件を通じて蓄積してまいりました実務上の知見に属しますので、本記事では詳細を開示しておりません。

よくあるご質問

質問1 株式を1株も持っていませんが、総会を開かせる方法はありませんか。

会社法上の招集の請求は株主の権利ですので、用いることができません。会社に対する書面による求めと、支給規程又は支給の慣行を根拠とする請求の組み立てが中心となります。

質問2 招集を請求してから、どのくらいで総会が開かれますか。

会社が請求に応じる場合の時期は、会社の判断によります。請求があった日から8週間以内の日を総会の日とする招集の通知が発せられないときは、裁判所の許可を得て自ら招集する道が開かれます(会社法第297条第4項)。

質問3 自分で総会を招集した場合、費用は誰が負担しますか。

招集に要する費用の取扱いは、事案により異なります。裁判所の許可を得た招集の手続については、招集をした株主が現実に費用を支出することになりますので、あらかじめ見込みを立てておく必要があります。

質問4 他の元役員と一緒に請求することはできますか。

議決権の割合は、複数の株主が共同して請求する場合には合算して判断されます。単独では要件を満たさない場合でも、他の株主の協力を得て要件を満たすことがあります。

7 議案が上程された場合に備えて整理しておく事項

株主総会に役員退職慰労金の議案が上程される場合、議案の文言が、その後の請求の可否を左右します。次の点を事前に整理しておく必要があります。

番号 整理する事項 理由
1 支給する旨を明示するか、枠のみを定めるか 具体的な請求権の発生の時期に関わります
2 金額を明示するか、算定方法によるか 後に金額が争われることを避けます
3 取締役会への一任の有無及び範囲 一任された後に決定がされない事態に備えます
4 支給の時期及び方法 支払期日の定めは遅延損害金の起算点に関わります
5 支給基準への言及 「当社の規程に従い」との文言の有無
6 分割払とする場合の期限の利益の喪失 支払が止まった場合の残額の請求に関わります

「支給することとし、その具体的な金額、支払の時期及び方法は取締役会に一任する」という文言が用いられる場合、株主総会の決議は存在することになりますが、取締役会が金額を決定しない限り具体的な金額は定まりません。この場合の争点は、決議の有無ではなく、取締役会が決定を行わないことに移ります。

したがって、議案の上程を求めるにあたっては、単に「議題に上げてほしい」と述べるのではなく、どのような内容の決議を求めるのかを明らかにしておくことに意味があります。

8 総会に出席する場合の準備

株主として総会に出席する場合には、次の準備を行います。

準備 内容
議決権の確認 株主名簿の記載、議決権の個数
委任状の要否 代理人による出席を予定する場合
質問事項の整理 取締役等の説明義務(会社法第314条)に基づく説明の求め
記録の方法 議事の経過の記録
議事録の閲覧の請求 総会後の議事録の確認(会社法第318条第4項)

取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならないものとされています(会社法第314条。ただし、一定の場合を除きます)。支給規程の有無、過去の支給の実績、支給しない理由といった事項について説明を求め、その回答を記録に残すことに意味があります。

本記事における非開示事項について

手続の選択の順序、会社に対する働きかけの時期、株主との調整の進め方は、株主構成、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開しておりません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしております。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで(土曜日・日曜日・祝日も受付)
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、登記事項証明書、定款の写し、株主名簿の写し、法人税申告書別表二の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしております。

本記事の根拠条文

会社法 第31条第2項(定款の閲覧等)、第297条第1項・第2項・第4項(株主による株主総会の招集の請求)、第303条(株主提案権)、第304条(議案提出権)、第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)

判例法理による部分 支給規程又は支給の慣行に基づいて決議を経ずに請求権が生ずるかについては、判例法理によります。個別の事案における適用は、規程の内容及び決議との関係により異なります。

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