判決を得る前に財産を確保する方法

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判決を得る前に財産を確保する方法に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において仮差押えの申立ての流れと疎明の資料及び担保の準備をご説明します。財産の所在を調べる手続は別のページをご参照ください。

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判決を得る前に財産を確保する方法

会社に対して役員退職慰労金の支払を求める訴訟を提起しても、判決が確定するまでには相応の期間を要します。その間に会社の財産が失われれば、勝訴しても回収はできません。判決を待たずに財産を確保する手段が、保全の手続です。本記事では、支払を求める側の元役員及びそのご遺族に向けて、その流れと準備を整理します。

結論 仮差押えは「時間を買う」手続です

仮差押えは、金銭債権の実現を保全するため、判決の前に債務者の財産の処分を制限する手続です。これにより、訴訟に要する期間中に財産が失われることを防ぐことができます。

手続 目的 効果
仮差押え 金銭債権の実現を保全します 対象財産の処分が制限されます
訴訟 権利の存在を確定させます 債務名義を取得します
強制執行 財産から現実に回収します 債権の満足を得ます

仮差押えは、それ自体が金銭を回収する手続ではありません。あくまで、その後の強制執行の実効性を確保するためのものです。

申立ての流れ

段階 内容 要する期間の目安
第1 資産の調査 対象となる財産を特定します 資料の入手状況によります
第2 疎明の資料の準備 権利及び必要性を示す資料を整えます 資料の状況によります
第3 申立て 管轄の裁判所に申立てを行います 書面の作成に要する期間があります
第4 審尋 裁判官との面接が行われます 申立てから比較的短期間で行われます
第5 担保の決定 裁判所が担保の額を定めます 審尋の後に示されます
第6 供託 担保を供託します 資金の準備が必要です
第7 発令及び執行 命令が発せられ、執行がされます 供託の後に速やかに行われます

仮差押えは、債務者に知られないまま手続が進むのが原則です。事前に会社に知られると、財産が移されるおそれがあるためです。したがって、申立ての準備は、会社に対する請求とは切り離して進めることになります。

疎明の資料の準備

保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性については、疎明しなければならないとされています(民事保全法第13条第2項)。疎明は、証明よりも低い程度の心証で足りるとされていますが、資料が全くない状態では認められません。

疎明の対象 資料
役員退職慰労金の請求権の存在 株主総会議事録、役員退職慰労金支給規程、支給に関する覚書、往復の書面
金額 規程の算定方法、役員報酬額が分かる資料、登記事項証明書
退任の事実 登記事項証明書
会社の財産の状況 計算書類、不動産の登記事項証明書
処分のおそれ 不動産の登記の動き、会社の説明、取引先からの情報
他の債権者の動き 不動産の登記事項証明書における差押えの記載

決議がされていない事案では、権利の疎明が難しくなります。この場合には、支給規程、過去の支給実績、会社が支払を認める発言をした記録といった資料を組み合わせて疎明することになります。

対象財産ごとの効果と留意点

対象 効果 留意点
不動産 登記により処分が事実上制限されます 先順位の担保権により担保余力がない場合は実益が乏しいものです
預金債権 金融機関に対する送達により直ちに効果が生じます 金融機関及び支店を特定する必要があります
売掛債権 取引先に通知されるため会社への影響が大きいものです 第三債務者を特定する必要があります
動産 目的物を特定せずに申し立てられます 換価の見込みを検討する必要があります

最も用いられるのは不動産です。登記により公示され、効果が明確であるためです。他方、担保余力がなければ意味を持ちませんので、事前に登記事項証明書により先順位の担保権を確認する必要があります。

預金債権は、送達により直ちに効果が生じる点で強力ですが、口座のある金融機関及び支店を特定しなければなりません。在任中の知識や、報酬の振込の記録から把握できる場合があります。

担保の準備

裁判所は、保全命令を発する場合には、担保を立てさせることができるとされています(民事保全法第14条第1項)。実務上、担保の提供が命じられるのが通例です。

担保の額は、被保全債権の額、対象財産の価額、疎明の程度、会社に生じ得る損害等を踏まえて裁判所が定めます。疎明が十分であれば低く、疎明が弱ければ高くなる傾向があります。

確認事項 内容
資金の準備 供託すべき金銭を用意できるか
担保の取戻し 本案で勝訴した場合等には取戻しの手続を行います
支払保証委託契約 金融機関等との契約による方法が認められる場合があります

担保として供託した金銭は、手続が終了した後に取戻しの手続を行うことになります。もっとも、直ちに返還されるものではありませんので、当面の資金として拘束されることを見込んでおく必要があります。

あらかじめ備えておく方法

紛争が生じる前の段階で備えておく方法として、次のものがあります。

方法 内容 効果
公正証書の作成 強制執行に服する旨の陳述を記載した公正証書を作成します 訴訟を経ずに強制執行の手続に進めます(民事執行法第22条第5号)
担保権の設定 会社の資産に抵当権等の設定を受けます 他の債権者に優先して回収できます
連帯保証 代表者個人の連帯保証を得ます 会社の資力が不足した場合の備えとなります
支給の前倒し 退任の前に支給を受けます 回収の問題自体が生じません

既に紛争となっている段階では、これらの備えを求めることは容易ではありません。もっとも、分割払の合意を結ぶ場面では、公正証書によること及び担保又は連帯保証を求めることを検討する余地があります。

仮差押えを行った後の進行

段階 内容
本案の訴訟 仮差押えの後、速やかに本案の訴訟を提起します
起訴命令 会社の申立てにより、裁判所が本案の訴えの提起を命じることがあります
仮差押解放金の供託 会社が供託した場合には執行が停止又は取消しとなります
保全異議及び保全取消し 会社が命令に対して不服を申し立てることがあります
和解 仮差押えを契機として交渉が進むことがあります

実務上、仮差押えを行ったことにより会社の姿勢が変わり、交渉による解決に至る事案が少なくありません。財産の処分が制限されることは、会社の事業に直接の影響を与えるためです。

仮差押えから本執行への移行 本記事が扱う範囲

本記事は、判決を得る前の段階、すなわち保全の手続を扱います。判決その他の債務名義を得た後に現実に金銭を回収する手続は、本記事の範囲外です。

仮差押えを行った後に本案の勝訴判決を得た場合には、同一の財産について改めて差押命令の申立てを行い、本執行へ移行します。仮差押えにより生じた処分の制限の効力は本執行に引き継がれますので、仮差押えの時点における地位が保たれます。

債務名義を得た後の執行文の付与、差押命令の申立て、取立て、及び差押えが空振りに終わった場合の対応は、判決を得たのに役員退職慰労金が支払われない場合の強制執行の進め方のページに整理しています。

案件で確認すべき事項

番号 確認事項 確認の方法
1 請求権の根拠及び疎明の資料の状況 株主総会議事録、支給規程、往復の書面
2 請求する金額及びその算定の根拠 規程、役員報酬額が分かる資料
3 会社が所有する不動産の有無及び担保余力 不動産の登記事項証明書
4 会社の預金口座のある金融機関及び支店 報酬の振込の記録
5 会社の主要な取引先 在任中の知識、計算書類
6 資産の処分の兆候の有無 登記の調査、関係者からの情報
7 他の債権者による差押えの有無 不動産の登記事項証明書
8 担保として供託し得る資金の有無 ご自身の資金の状況
9 会社に知られずに準備を進められるか これまでのやり取りの状況
10 退任からの経過期間 登記事項証明書

弁護士にご相談いただく意味

保全の手続は、疎明の資料の準備、対象財産の選定、担保の準備を短期間で行う必要があります。また、会社に知られずに進めることが前提となりますので、請求の交渉との兼ね合いを慎重に判断しなければなりません。

弁護士は、元役員の代理人として、資産の状況の調査、疎明の資料の整理、仮差押えの申立て、担保の手続、本案の訴訟の提起及び遂行、債務名義に基づく強制執行の手続、担保の取戻しの手続を行います。

よくあるご質問

質問1 判決を待たずに財産を押さえられますか。

仮差押えの手続により可能な場合があります。保全すべき権利及び保全の必要性の疎明並びに担保の提供が必要となります。

質問2 決議がされていませんが、仮差押えはできますか。

権利の疎明が難しくなりますが、支給規程、過去の支給実績、会社の発言の記録などを組み合わせて疎明することを検討します。

質問3 担保はどのくらい必要ですか。

被保全債権の額、対象財産の価額、疎明の程度等により裁判所が定めます。事案により異なりますので、個別に見通しを検討することになります。

質問4 会社の預金口座が分かりません。

報酬の振込の記録から把握できる場合があります。不明な場合には、不動産その他の財産を対象とすることを検討します。

質問5 仮差押えをすると会社が倒れませんか。

対象財産の選び方により会社への影響は異なります。事業への影響と回収の実効性との兼ね合いで、対象を選定することになります。

まとめ

本記事の要点は次のとおりです。第1に、仮差押えは判決を待たずに財産の処分を制限する手続であり、訴訟に要する期間中に会社の財産が失われることを防ぐものです。第2に、申立てには被保全権利及び保全の必要性の疎明を要しますので、支給規程、議事録、往復の書面等を整えます。第3に、対象となる財産ごとに効果と留意点が異なりますので、実効性を見極めて選びます。

第4に、担保の提供を要しますので、その準備をあらかじめ見込んでおきます。第5に、仮差押えの後は本案の訴えを提起し、判決を得たうえで本執行へ移行します。第6に、会社の資産が処分され始めている兆候がある場合には、時機を失することなく着手することが重要です。

本記事における非開示事項について

申立ての時期の判断、対象財産の選定、交渉との兼ね合いの見極め、疎明の資料の組み立て方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、登記事項証明書、会社が所有する不動産の登記事項証明書、株主総会議事録の写し、役員退職慰労金支給規程の写し、報酬の振込の記録、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)

民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)

民事保全法 第13条第1項・第2項(申立て及び疎明)、第14条第1項(担保)、第20条第1項(仮差押命令の必要性)、第21条(仮差押命令の対象)、第22条第1項(仮差押解放金)

民事執行法 第22条第5号(債務名義としての執行証書)

判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれることについては、判例法理によります。保全の必要性の有無及び担保の額は、事実関係に照らし、裁判所が個別に判断いたします。

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