判決を得たのに役員退職慰労金が支払われない場合の強制執行の進め方

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判決の後の強制執行の進め方に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において執行文などの書類を整え、差し押さえる財産を選んで申立てを行う流れをご説明します。判決を得る前の保全は別のページをご参照ください。
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- 判決を得たのに役員退職慰労金が支払われない場合の強制執行の進め方
- 結論 判決の後は、書類を整え、差し押さえる財産を選び、申立てを行います
- 判決を得ただけでは金銭は動かない 執行の全体像
- 執行の前に整える三つの書類 執行文、送達証明書及び確定証明書
- どの財産を差し押さえるか 預貯金、売掛金及び不動産の比較
- 債権差押命令の申立てから取立てまで
- 差押えが空振りに終わった場合に採り得る手段
- 財産開示手続及び第三者からの情報取得手続の使い方
- 費用と期間の見通し
- 会社が異議を述べてきた場合 請求異議の訴えと執行抗告
- 案件で確認すべき事項
- 弁護士にご相談いただく意味
- よくあるご質問
- まとめ
- 本記事における非開示事項について
- 弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
- 本記事の根拠条文
- 関連するご案内
判決を得たのに役員退職慰労金が支払われない場合の強制執行の進め方
「勝訴判決を得ました。それなのに、会社は一円も支払いません」。このようなご相談を受けることがあります。判決は、支払を命ずる国家の判断ですが、判決それ自体が会社の口座から金銭を動かすわけではありません。現実の回収には、別の手続、すなわち強制執行を要します。本記事では、役員退職慰労金の支払を命ずる債務名義を得た元役員及びそのご遺族に向けて、執行の準備から取立てまでの手順、費用の見通し、及び差押えが空振りに終わった場合の対応を整理します。
結論 判決の後は、書類を整え、差し押さえる財産を選び、申立てを行います
強制執行は、債務名義、執行文及び送達の証明という三つの要素がそろって初めて開始されます。そのうえで、どの財産を差し押さえるかを選び、裁判所へ申し立てます。役員退職慰労金の回収において最も多く用いられるのは、会社の預貯金債権及び売掛金債権に対する差押えです。
| 段階 | 行うこと | 中心となる根拠 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 執行文の付与、送達証明書及び確定証明書の取得 | 民事執行法第25条、第26条、第29条 |
| 第2段階 | 差し押さえる財産の選定と、その特定に必要な情報の収集 | 民事執行法第143条、第196条以下、第204条以下 |
| 第3段階 | 差押命令の申立て | 民事執行法第145条 |
| 第4段階 | 第三債務者からの取立て、又は配当 | 民事執行法第155条、第166条 |
執行の手続は、債務者である会社の側の協力を要しません。会社が支払を拒んでいても、差押えの効力は第三債務者(銀行、取引先等)に対して直接に生じます。ここに、判決を得ることの実益があります。
判決を得ただけでは金銭は動かない 執行の全体像
判決を得た後に会社が任意に支払う場合には、執行を要しません。実務においては、判決の確定の後に改めて支払を求める書面を送り、期限を定めて回答を求めます。この段階で支払われる事案も相当数あります。
他方、会社が「資金がない」と述べ、又は回答をしない場合には、執行に進みます。ここで重要なのは、執行の対象となる財産は、こちらが特定しなければならないという点です。裁判所が会社の財産を探してくれるわけではありません。
| 執行の種類 | 対象 | 根拠 | 役員退職慰労金の回収における位置付け |
|---|---|---|---|
| 債権執行 | 預貯金債権、売掛金債権、賃料債権等 | 民事執行法第143条以下 | 最も多く用いられます。手続が比較的簡易で、費用も低く抑えられます |
| 不動産執行 | 土地、建物 | 民事執行法第43条以下 | 会社が不動産を保有する場合に検討します。予納金が高額となります |
| 動産執行 | 商品、機械、現金等 | 民事執行法第122条以下 | 換価の価額が低いことが多く、単独では用いにくいものです |
| その他の財産権に対する執行 | ゴルフ会員権、株式、知的財産権等 | 民事執行法第167条 | 対象が限られます |
どの執行を選ぶかは、会社の財産の状況によります。会社の規模、業種及び取引の形態により、実効性のある対象は異なります。製造業及び卸売業であれば売掛金債権が、不動産賃貸業であれば賃料債権が、それぞれ有力な対象となります。
執行の前に整える三つの書類 執行文、送達証明書及び確定証明書
強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施されます(民事執行法第25条)。判決正本を持っているだけでは足りません。次の三つを整えます。
| 書類 | 内容 | 取得する先 | 申請の際の留意点 |
|---|---|---|---|
| 執行文 | 債務名義に基づく強制執行を実施し得ることを公証する付記です | 判決をした裁判所の裁判所書記官(執行証書の場合は公証人) | 債務名義の正本を提出します。承継が生じている場合には承継執行文を要します(民事執行法第27条第2項) |
| 送達証明書 | 債務名義の正本又は謄本が会社に送達されたことを証明する書面です | 判決をした裁判所の裁判所書記官 | 執行の開始の要件です(民事執行法第29条)。送達がされていない場合には、先に送達の申請を行います |
| 確定証明書 | 判決が確定したことを証明する書面です | 判決をした裁判所の裁判所書記官 | 仮執行の宣言が付されている場合には、確定を待たずに執行できますので、確定証明書を要しません |
正本と謄本とを取り違えないよう注意します。執行文は正本に付されます。判決の言渡しの後に交付を受けた書面が正本であるか謄本であるかを、表題により確認します。謄本しか手元にない場合には、正本の交付を申請します。
和解調書、調停調書及び執行証書についても、同様に執行文及び送達証明書を要します。和解の席で受け取った調書の正本に執行文が付されていないことは珍しくありませんので、必ず確認します。
なお、債務名義となるものは民事執行法第22条に列挙されています。確定判決(第1号)、仮執行の宣言を付した判決(第2号)、仮執行の宣言を付した支払督促(第4号)、執行証書(第5号)及び確定判決と同一の効力を有するもの(第7号。和解調書、調停調書等)が、役員退職慰労金の回収において通常用いられるものです。
どの財産を差し押さえるか 預貯金、売掛金及び不動産の比較
差押えの対象は、こちらが特定して申し立てます。そこで、会社のどの財産を対象とするかを、実効性、特定の難易及び費用の観点から検討します。
| 対象 | 実効性 | 特定に必要な情報 | 留意する点 |
|---|---|---|---|
| 預貯金債権 | 入金があれば直ちに取り立てられます | 金融機関の名称及び取扱店舗(支店)の特定 | 差押えの効力は命令が第三債務者に送達された時点の残高に及びます。時点により残高が異なりますので、資金の動く日を意識します |
| 売掛金債権 | 取引が継続していれば実効性が高いものです | 取引先の商号及び本店の所在地 | 取引先に対し会社の窮状が知られますので、会社に対する事実上の圧力ともなります。他方、取引関係が損なわれることにより会社の資力が更に低下する面もあります |
| 賃料債権 | 毎月の入金が見込まれます | 賃借人の氏名又は商号 | 会社が不動産を賃貸している場合に有力です |
| 不動産 | 価額が大きいものです | 不動産の所在、地番及び家屋番号 | 予納金が高額であり、換価までに長期を要します。先順位の抵当権が設定されている場合には、剰余の見込みがないとして手続が取り消されることがあります(民事執行法第63条) |
差押えの効力が及ぶ範囲を正確に理解します。預貯金債権の差押えは、命令が金融機関に送達された時点における残高に対して効力を生じます。将来入金される予定の金銭には及びません。したがって、資金の滞留する時期を見込んで申し立てることになります。
これに対し、売掛金債権及び賃料債権については、継続的な取引に基づき将来生ずる債権を含めて差し押さえることができる場合があります。申立書における債権の表示の仕方により結果が変わりますので、記載を慎重に検討します。
取引銀行を特定する資料としては、過去の役員報酬の振込みに関する記録、会社との往復の書面、決算書の勘定科目内訳明細書(現金及び預金の内訳)、並びに会社の請求書及び領収書に記載された振込先が有用です。在任中に入手した資料が手元に残っている場合には、これを確認します。
なお、会社が法人である場合には、差押禁止債権に関する民法及び民事執行法第152条の規定は原則として問題となりません。同条は、給料等の債権を有する個人の生活の維持を目的とするものだからです。会社の代表者個人に対する債務名義を有する場合には、同条の適用があります。
債権差押命令の申立てから取立てまで
債権執行は、債権者の申立てにより、執行裁判所が差押命令を発する方法により開始されます(民事執行法第143条、第145条第1項)。手続の流れは次のとおりです。
| 手順 | 内容 | 根拠 | おおよその期間 |
|---|---|---|---|
| 申立て | 債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます | 民事執行法第144条第1項 | ― |
| 差押命令の発令 | 債務者及び第三債務者を審尋しないで発せられます | 民事執行法第145条第2項 | 申立てから数日から2週間程度 |
| 第三債務者への送達 | 送達により差押えの効力が生じます | 民事執行法第145条第5項 | 発令から数日 |
| 債務者への送達 | 会社に対して送達されます | 民事執行法第145条第3項 | 同上 |
| 取立ての開始 | 債務者に送達された日から1週間を経過したときに取り立てることができます | 民事執行法第155条第1項 | 送達から1週間 |
| 取立届の提出 | 取り立てた額を執行裁判所に届け出ます | 民事執行規則第137条 | 取立ての後直ちに |
申立書には、当事者、請求債権及び差押債権を記載します。このうち最も注意を要するのが差押債権の表示です。対象となる債権を、他の債権と区別することができる程度に特定しなければなりません。金融機関に対する預貯金債権であれば、取扱店舗を特定し、複数の口座がある場合の充当の順序を記載します。
第三債務者に対する陳述の催告(民事執行法第147条第1項)は、申立てと同時に申し立てます。これにより、第三債務者は、差押えに係る債権の存否、その額、他に差押えがあるか等を書面により回答する義務を負います。回答は通常2週間程度で届きます。ここで残高が判明しますので、次の手を検討する材料となります。
取立ては、第三債務者に対して直接に支払を求める方法により行います。第三債務者が任意に支払わない場合には、取立訴訟(民事執行法第157条)を提起することができます。もっとも、金融機関及び上場会社が第三債務者である場合には、任意に支払われるのが通常です。
複数の債権者が同一の債権を差し押さえた場合、又は第三債務者が供託した場合(民事執行法第156条)には、配当の手続に移ります。この場合、役員退職慰労金債権に優先権はありませんので、他の一般債権者と債権額に応じて按分することになります。
差押えが空振りに終わった場合に採り得る手段
差し押さえた預貯金の残高が僅少であった、又は売掛金が存在しなかったという結果に終わることがあります。これを実務では空振りと呼びます。空振りは失敗ではなく、情報の取得です。次の手を組み立てます。
| 状況 | 次に採る手段 | 留意する点 |
|---|---|---|
| 残高が僅少であった | 時期を改めて再度申し立てます | 同一の債権に対する再度の申立ては妨げられません。資金の入る時期を見込みます |
| 対象を誤っていた | 陳述の催告に対する回答を手掛かりに、対象を変更して申し立てます | 回答により他の差押えの有無も判明します |
| 財産の所在が分からない | 財産開示手続又は第三者からの情報取得手続を申し立てます | 民事執行法第196条以下、第204条以下 |
| 会社に見るべき財産がない | 会社の資産が不当に流出していないかを検討します | 詐害行為取消権(民法第424条)、会社分割及び事業譲渡に伴う責任の追及(会社法第22条第1項、第759条第4項等) |
| 回収の見込みが乏しい | 費用倒れとならないよう、いったん手続を止める判断もあります | 債務名義に基づく請求権の消滅時効は確定の時から10年です(民法第169条第1項)ので、時期を待つ選択もあります |
費用倒れの判断は率直に行います。債権差押命令の申立てそのものの費用は高額ではありませんが、回数を重ねれば積み上がります。会社の事業の継続性、取引の規模及び資産の状況を踏まえ、どこまで続けるかをあらかじめ決めておくことが有益です。
財産開示手続及び第三者からの情報取得手続の使い方
会社の財産の所在が分からない場合には、法が用意する二つの手続を用います。いずれも債務名義を有する債権者が申し立てるものです。
| 手続 | 内容 | 根拠 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 財産開示手続 | 債務者を裁判所に呼び出し、財産の状況を陳述させます | 民事執行法第196条から第203条まで | 会社の場合は代表者が出頭します。正当な理由なく出頭せず、又は虚偽の陳述をしたときは刑事罰の対象となります(同法第213条第1項第5号、第6号) |
| 第三者からの情報取得手続(預貯金債権等) | 金融機関に対し、債務者名義の預貯金の存否、取扱店舗及び残高の情報の提供を命じます | 民事執行法第207条第1項 | 金融機関を指定して申し立てます。回答により取扱店舗が判明します |
| 第三者からの情報取得手続(不動産) | 登記所に対し、債務者が所有権の登記名義人である不動産に関する情報の提供を命じます | 民事執行法第205条第1項 | 財産開示手続が先行して実施されていることを要します(同条第2項) |
| 第三者からの情報取得手続(振替社債等) | 振替機関等に対し、債務者の有する振替社債等に関する情報の提供を命じます | 民事執行法第207条第1項第2号 | 対象が限られます |
実務においては、まず第三者からの情報取得手続により預貯金の所在を把握し、必要に応じて財産開示手続を用いるという順序を採ることが多くあります。預貯金に係る情報取得手続は、財産開示手続の先行を要しないためです。
金融機関を指定する必要がありますので、会社の本店の所在地の周辺の金融機関、及び在任中に取引のあった金融機関を挙げることになります。指定した金融機関に口座がない場合には、その旨の回答が返ります。
回答までの期間は、申立てから概ね1か月から2か月程度を要することが多いものですが、事件の状況及び裁判所により異なります。あらかじめ裁判所に確認します。
なお、財産開示手続は、代表者に対して直接に説明を求める場という側面を有します。手続が実施されること自体が、会社に対して任意の支払を促す契機となることがあります。
会社の財産の調査の方法一般については、会社の財産の所在を調べる手続のページに整理しています。
費用と期間の見通し
執行の費用は、対象及び裁判所により異なります。ここでは、断定を避けつつ、考え方の枠組みを示します。
| 費目 | 内容 | 留意する点 |
|---|---|---|
| 申立ての手数料 | 債権執行の申立てには収入印紙により納めます | 債務名義1通につき定額です。裁判所により取扱いが異なることはありません |
| 予納郵便切手 | 当事者及び第三債務者への送達に用います | 当事者及び第三債務者の数により額が変わります。裁判所により組合せが異なりますので、申立ての前に確認します |
| 予納金 | 不動産執行の場合に要します | 債権執行と比べて著しく高額です。剰余の見込みを慎重に検討します |
| 資格証明書等の取得費用 | 会社及び第三債務者の登記事項証明書等 | 第三債務者の数に応じて増えます |
| 弁護士費用 | 申立ての準備、書面の作成及び取立ての対応 | 当事務所の考え方は弁護士費用のご案内のページに整理しています |
期間の見通しは、債権執行であれば、申立てから取立てまで概ね1か月から2か月程度を目安とすることが多いものです。もっとも、第三債務者の数、送達の状況及び裁判所の事件の状況により変動します。不動産執行の場合には、換価までに半年から1年以上を要することがあります。
これらの費目及び期間は、いずれも事案及び裁判所により異なりますので、申立ての前に管轄の裁判所に確認します。
会社が異議を述べてきた場合 請求異議の訴えと執行抗告
差押えを受けた会社が、これを争ってくることがあります。争う方法は法定されており、これに応じて対応します。
| 会社が採る手段 | 内容 | 根拠 | こちらの対応 |
|---|---|---|---|
| 執行抗告 | 差押命令等の裁判に対する不服の申立てです | 民事執行法第10条第1項、第145条第6項 | 抗告の理由を確認し、意見を述べます。執行の停止を伴う場合があります |
| 執行異議 | 執行裁判所の執行処分等に対する異議です | 民事執行法第11条第1項 | 同上 |
| 請求異議の訴え | 債務名義に係る請求権の存在又は内容について異議を述べる訴えです | 民事執行法第35条第1項 | 判決の口頭弁論の終結の後に生じた事由に限られます(同条第2項)。弁済、相殺、免除等の主張の当否を検討します |
| 第三者異議の訴え | 差し押さえた財産が第三者に属すると主張する訴えです | 民事執行法第38条第1項 | 対象財産の帰属に関する資料により反論します |
執行の停止は、これらの手続に伴い、担保を立てさせて命じられることがあります(民事執行法第36条第1項、第37条第1項)。停止が命じられた場合には、取立てを控え、本案の審理において反論します。
請求異議の訴えにおいて会社が述べる事由として多いのは、判決の後に一部を支払った、他の債権と相殺した、又は支払を猶予する合意をしたというものです。いずれも、判決の口頭弁論が終結した後に生じた事由であることを要します。判決の前から存在した事由は、既判力により遮断されます。
なお、差押えを受けた会社が、取引先との関係を理由に取下げを求めてくることがあります。この場合には、支払の確約及びその履行の確保(分割払の合意書の作成、公正証書の作成、担保の設定等)を条件として検討します。単に取り下げるのみでは、同じ状態に戻るだけとなります。
分割払の合意が改めて成立した後に、これが履行されなくなった場合の対応は、分割払の合意が途中で履行されなくなった場合の残額の請求のページに整理しています。
案件で確認すべき事項
執行に着手する前に、次の各点を確認します。
| 確認する事項 | 確認の方法 |
|---|---|
| 債務名義の種類及び正本の有無 | 手元の書面の表題を確認します。正本でない場合には正本の交付を申請します |
| 執行文の付与の有無 | 債務名義の末尾に付記されているかを確認します |
| 送達の完了 | 送達証明書を取得します。取得できない場合には送達の申請から行います |
| 会社の現在の商号及び本店の所在地 | 登記事項証明書により確認します。判決の後に商号又は本店が変更されている場合には、その旨を疎明する資料を添えます |
| 代表者の変更の有無 | 同上。代表者が交替している場合には、現在の代表者を相手方とします |
| 会社の事業の継続の有無 | 取引先への照会、ウェブサイト、登記の状況等により確認します。解散又は破産に至っている場合には、執行ではなく別の手続を検討します |
| 他の債権者の動向 | 陳述の催告に対する回答により、他に差押えがあるかが判明します |
| 消滅時効の管理 | 確定判決により確定した権利の消滅時効は10年です(民法第169条第1項)。長期にわたり執行を控える場合には、期間の管理を要します |
弁護士にご相談いただく意味
執行の手続は、書式の整った申立書を提出すれば足りるように見えますが、実際には次の点において判断を要します。
第1に、対象の選定です。どの財産をいつ差し押さえるかにより、結果が大きく異なります。会社の資金の流れを読み、実効性のある対象を選ぶことが求められます。
第2に、債権の表示です。特定が不十分であると、差押命令が発せられず、又は第三債務者から債権が存在しない旨の回答が返ります。対象の性質に応じた記載を要します。
第3に、会社の反応への対応です。差押えを受けた会社は、取下げを求め、又は異議を述べてきます。ここで応じるか、条件を付するか、そのまま進めるかの判断が、最終的な回収額を左右します。
第4に、止め時の判断です。回収の見込みと費用との均衡を見て、いったん手続を止めることが合理的な場合もあります。この判断は、会社の資力に関する情報を踏まえて行います。
よくあるご質問
質問1 判決が確定するまで待たなければなりませんか。
仮執行の宣言が付されている場合には、確定を待たずに執行することができます。判決書の主文の末尾に仮執行の宣言があるかを確認してください。ただし、会社が控訴し、執行の停止が命じられることがあります。
質問2 会社の取引銀行が分かりません。
第三者からの情報取得手続(民事執行法第207条第1項)により、金融機関を指定して預貯金の情報の提供を求めることができます。在任中の振込みの記録、決算書の勘定科目内訳明細書等も手掛かりとなります。
質問3 差し押さえたところ、残高が数千円しかありませんでした。
同一の債権に対して再度申し立てることができます。資金の入る時期を見込んで時期を改めるほか、売掛金債権その他の対象に切り替えることも検討します。
質問4 取引先の売掛金を差し押さえると、会社の事業が立ち行かなくなるのではありませんか。
その懸念は現実のものです。他方、差押えが会社に対する事実上の圧力となり、任意の支払につながることもあります。会社の資力、取引の構造及び回収の見込みを踏まえて判断します。
質問5 判決から何年も経っていますが、まだ執行できますか。
確定判決により確定した権利の消滅時効は、確定の時から10年です(民法第169条第1項)。期間の経過に注意しつつ、必要に応じて再度の訴えの提起等により期間を確保します。
質問6 会社が「支払う」と言うので取下げを求められています。
取下げのみに応じることは適当ではありません。支払の期日及び方法を定めた合意書の作成、公正証書の作成等により、履行を確保したうえで判断します。
まとめ
本記事の要点は次のとおりです。第1に、判決を得ることと金銭を回収することとは別の段階であり、回収には強制執行という別の手続を要します。第2に、執行の開始には、債務名義の正本、執行文及び送達証明書の三つを整えることが必要です(民事執行法第25条、第29条)。第3に、差し押さえる財産はこちらが特定して申し立てるものであり、預貯金債権、売掛金債権及び不動産のいずれを選ぶかにより、実効性、費用及び期間が異なります。
第4に、財産の所在が分からない場合には、財産開示手続(民事執行法第196条以下)及び第三者からの情報取得手続(同法第204条以下)を用いることができます。第5に、差押えが空振りに終わった場合でも、そこで得られた情報を手掛かりに次の手を組み立てることができます。第6に、会社が請求異議の訴え等により争う場合には、口頭弁論の終結の後に生じた事由に限られるという枠組みに従って反論します。
判決を得た後に何もしないまま時間が経過することが、最も避けるべき事態です。会社の資産は日々動きます。判決の確定の後は、速やかに書類を整え、対象を選び、申立てに進むことをお勧めします。
本記事における非開示事項について
差し押さえる対象の選び方、申立ての時期の見極め、差押債権の表示の具体的な記載方法、及び会社からの取下げの要請に対する条件の設計は、会社の規模、業種、取引の構造、資産の状況及び従前の経緯により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の回収に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。
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- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、判決正本、和解調書又は調停調書、確定証明書、執行文の付された正本、送達証明書、会社の登記事項証明書、及び会社の取引金融機関又は取引先が分かる資料をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
民事執行法 第10条第1項(執行抗告)、第11条第1項(執行異議)、第22条(債務名義)、第25条(強制執行の実施)、第26条(執行文の付与)、第27条第2項(承継執行文)、第29条(債務名義等の送達)、第35条第1項・第2項(請求異議の訴え)、第36条第1項(執行停止の裁判)、第37条第1項(同)、第38条第1項(第三者異議の訴え)、第43条(不動産執行の方法)、第63条(剰余を生ずる見込みのない場合の措置)、第122条(動産執行)、第143条(債権執行の開始)、第144条第1項(執行裁判所)、第145条(差押命令)、第147条第1項(第三債務者の陳述の催告)、第152条(差押禁止債権)、第155条第1項(差押債権者の金銭債権の取立て)、第156条(第三債務者の供託)、第157条(取立訴訟)、第166条(配当等の実施)、第167条(その他の財産権に対する強制執行)、第196条から第203条まで(財産開示手続)、第204条から第211条まで(第三者からの情報取得手続)、第213条第1項(罰則)
民事執行規則 第137条(取立ての届出)
民事保全法 第20条(仮差押命令の必要性)
民法 第169条第1項(判決で確定した権利の消滅時効)、第424条(詐害行為取消請求)
会社法 第22条第1項(譲受会社による債務の弁済の責任)、第759条第4項(会社分割における債権者の保護)
関連するご案内
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