会社の財産の所在を調べる手続

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会社の財産の所在を調べる手続に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において債務名義の有無により用いる手続が変わる点を順にご説明します。処分が始まった場合の保全は別のページをご参照ください。
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会社の財産の所在を調べる手続
会社に対する請求権が認められても、財産の所在が分からなければ回収はできません。財産の調査は、請求の初期の段階から並行して進めるべき作業です。本記事では、支払を求める側の元役員及びそのご遺族に向けて、どのような手続により会社の財産を把握できるかを整理します。
結論 債務名義の有無により、使える手続が大きく変わります
| 段階 | 使える手続 |
|---|---|
| 債務名義を得る前 | 登記による調査、会社法上の閲覧謄写の請求、弁護士会を通じた照会、訴訟における文書提出命令及び調査嘱託の申立て |
| 債務名義を得た後 | 上記に加え、財産開示手続、第三者からの情報取得手続 |
債務名義を得た後には、裁判所の手続により債務者の財産に関する情報を取得する道が開かれます。したがって、財産の把握という観点からも、早期に判決その他の債務名義を取得することに意味があります。
登記による調査
商業登記事項証明書
誰でも交付を請求することができます。会社の本店の所在地、支店の有無、資本金の額、役員の構成、目的、会社分割その他の組織再編の有無を確認します。会社の状況の変化を読み取る手掛かりとなります。
不動産の登記事項証明書
会社が所有する不動産について、誰でも交付を請求することができます。所有権の帰属、担保権の設定の状況、差押えの有無を確認します。
会社が所有する不動産の所在が分からない場合には、本店及び事業所の所在地から調査を始めます。在任中の知識により、工場、倉庫、社宅等の所在を把握している場合には、それらについても確認します。
| 読み取る事項 | 意味 |
|---|---|
| 抵当権及び根抵当権の設定 | 金融機関からの借入れの規模、担保余力の有無 |
| 極度額 | 借入れの限度 |
| 順位 | 回収の見込みの判断材料となります |
| 所有権の移転 | 資産の流出の有無 |
| 仮差押え及び差押えの登記 | 他の債権者の動き |
会社法上の閲覧謄写の請求
| 資料 | 請求できる者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 計算書類等 | 株主及び債権者 | 会社法第442条第3項 |
| 株主総会議事録 | 株主及び債権者 | 会社法第318条第4項 |
| 取締役会議事録 | 株主(裁判所の許可を要する場合があります) | 会社法第371条第2項、第3項 |
| 会計帳簿等 | 議決権の100分の3以上を有する株主等 | 会社法第433条第1項 |
役員退職慰労金の未払を主張する元役員は、会社に対する債権者としての地位を主張し得る立場にありますので、計算書類等の閲覧謄写の請求については、債権者としての請求を検討する余地があります。もっとも、会社が債権の存在自体を争う場合には、この点も争いとなり得ます。
計算書類からは、現金及び預金の額、売掛金、棚卸資産、固定資産、借入金の残高、純資産の額を把握することができます。これにより、会社の資力の全体像をつかむことができます。
弁護士会を通じた照会
弁護士は、受任している事件について、所属する弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができるとされています(弁護士法第23条の2)。
この手続により、会社の取引金融機関に関する情報などを得られる場合があります。もっとも、照会先が回答する義務の有無及び回答の範囲には限界がありますので、確実に情報が得られるとは限りません。
訴訟における手続
| 手続 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 文書提出命令の申立て | 会社が保有する文書の提出を求めます | 民事訴訟法第219条から第223条まで |
| 調査嘱託の申立て | 官庁又は団体に必要な調査を嘱託することを求めます | 民事訴訟法第186条 |
| 当事者尋問 | 会社の代表者に対して財産の状況を尋ねます | 民事訴訟法第207条以下 |
訴訟の中で会社の代表者に対する尋問が行われる場合には、財産の状況について尋ねることができます。回答の内容は、その後の執行における手掛かりとなり得ます。
財産開示手続
執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者等は、債務者の財産の開示を求める手続の申立てをすることができるものとされています(民事執行法第196条以下)。この手続では、債務者が裁判所に出頭し、財産について陳述することになります。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 前提 | 債務名義を有していることが必要です |
| 手続 | 債務者が裁判所において財産について陳述します |
| 対象 | 債務者が有する財産全般 |
| 不出頭等への対応 | 正当な理由なく出頭しない場合等には罰則の定めが置かれています |
会社が債務者である場合には、その代表者が出頭して陳述することになります。この手続は、財産の全体像を債務者自身に述べさせるという点で有効です。
第三者からの情報取得手続
執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者等は、金融機関等の第三者から債務者の財産に関する情報を取得する手続の申立てをすることができるものとされています(民事執行法第204条以下)。
| 情報の種類 | 提供する者 |
|---|---|
| 預貯金債権に関する情報 | 金融機関 |
| 振替社債等に関する情報 | 振替機関等 |
| 不動産に関する情報 | 登記所 |
この手続により、会社の預貯金口座の所在及び残高に関する情報を得られる場合があります。従前は、口座のある金融機関及び支店を債権者自身が特定しなければならず、大きな障害となっていました。この手続の活用により、回収の実効性が高まっています。
調査の進め方
| 段階 | 行うこと | 目的 |
|---|---|---|
| 第1 | 商業登記事項証明書及び不動産の登記事項証明書を取得します | 会社に知られずに基礎的な情報を得ます |
| 第2 | 手元の資料(報酬の振込の記録等)を確認します | 取引金融機関を把握します |
| 第3 | 計算書類等の閲覧謄写を請求します | 資力の全体像をつかみます |
| 第4 | 必要に応じて保全の手続を検討します | 財産の流出を防ぎます |
| 第5 | 訴訟を提起し、債務名義を取得します | 執行の前提を整えます |
| 第6 | 財産開示手続及び第三者からの情報取得手続を用います | 執行の対象を特定します |
| 第7 | 強制執行の申立てを行います | 現実に回収します |
案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 会社の商号、本店の所在地及び支店の有無 | 商業登記事項証明書 |
| 2 | 会社が所有する不動産の所在 | 在任中の知識、不動産の登記事項証明書 |
| 3 | 不動産に対する担保権及び差押えの状況 | 不動産の登記事項証明書 |
| 4 | 報酬が振り込まれていた金融機関及び支店 | 預金通帳、振込の記録 |
| 5 | 会社の主要な取引先 | 在任中の知識、計算書類 |
| 6 | 直近数期の資産及び負債の状況 | 計算書類 |
| 7 | 会社分割その他の組織再編の有無 | 商業登記事項証明書 |
| 8 | 他の債権者の動きの有無 | 不動産の登記事項証明書 |
| 9 | 債務名義の有無 | 判決、公正証書 |
| 10 | 元役員が株主であるか | 株主名簿、法人税申告書別表二 |
弁護士にご相談いただく意味
財産の調査は、用いる手続の順序と時期が重要です。会社に知られずに行える調査を先に済ませ、必要な情報を得たうえで請求に移ることにより、資産が移される前に手を打つことができます。また、債務名義を得た後に用いる手続は、いずれも裁判所への申立てを要します。
弁護士は、元役員の代理人として、登記による調査、会社法上の各種の閲覧謄写の請求、弁護士会を通じた照会、訴訟における文書提出命令及び調査嘱託の申立て、保全の手続、債務名義の取得、財産開示手続及び第三者からの情報取得手続の申立て、強制執行の手続を行います。
よくあるご質問
質問1 会社の預金口座を調べられますか。
債務名義を有している場合には、第三者からの情報取得手続により金融機関から情報を得られる場合があります。債務名義がない段階では、報酬の振込の記録などから把握することになります。
質問2 会社に知られずに調べる方法はありますか。
商業登記事項証明書及び不動産の登記事項証明書の取得は、会社に知られることなく行うことができます。まずこれらから始めることが通例です。
質問3 財産開示手続とはどのようなものですか。
債務名義を有する債権者の申立てにより、債務者が裁判所に出頭して財産について陳述する手続です(民事執行法第196条以下)。会社が債務者である場合には、その代表者が出頭することになります。
質問4 会社に財産がなさそうです。それでも調べる意味はありますか。
計算書類上は乏しく見えても、担保余力のある不動産や売掛債権が存在する場合があります。調査を行ったうえで判断することが有益です。
質問5 在任中に知っていた情報を使ってよいですか。
ご自身が職務上知り得た情報の取扱いには配慮を要する場合がありますので、進め方について個別にご相談ください。
本記事における非開示事項について
調査に用いる手続の順序及び時期の選択、在任中に得た情報の取扱い、保全及び執行に移る判断は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。
- 電話番号 03-6435-8418
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、会社が所有する不動産に関する情報、預金通帳及び報酬の振込の記録、計算書類の写し、判決又は公正証書の写しをお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧謄写)、第433条第1項(会計帳簿等の閲覧謄写の請求)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)
民事訴訟法 第186条(調査の嘱託)、第207条以下(当事者尋問)、第219条から第223条まで(書証及び文書提出命令)
民事執行法 第22条第5号(債務名義としての執行証書)、第196条以下(財産開示手続)、第204条以下(第三者からの情報取得手続)
民事保全法 第20条第1項(仮差押命令の必要性)
弁護士法 第23条の2(報告の請求)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれることについては、判例法理によります。債権者としての閲覧謄写の請求の可否は、債権の存否に関する会社の対応により、個別の事案ごとに問題となります。
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