役員報酬の未払は何年前まで請求できるのか

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未払の役員報酬をさかのぼれる期間に関するメインのページです。本ページは、退任した役員の側に向けて、月ごとに進行する消滅時効の仕組みと承認による更新をご説明します。在任を続けたまま支払が止まる場面は別のページをご参照ください。

▶ 役員報酬を一方的に減額された場合に差額を請求する方法

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役員報酬の未払は何年前まで請求できるのか

役員報酬が支払われないまま年数が経過している場合、どこまで遡って請求できるのかは、最初に確認すべき事項です。放置している間に古い分から順に時効期間が満了していきますので、対応の早さが請求できる範囲を左右します。本記事では、支払を求める側の役員及び元役員に向けて、時効の仕組みを整理します。

結論 原則として、権利を行使できることを知った時から5年です

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅するとされています(民法第166条第1項)。

内容
第1号 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
第2号 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

役員報酬については、支払期日が定められているのが通例であり、その期日に権利を行使することができることを知っていたと考えられます。したがって、実際には5年の期間が問題となることが多いといえます。

月ごとに進行する仕組み

役員報酬は、通常、月ごとに支払期日が定められています。各月の報酬は、それぞれ独立した債権として扱われますので、時効も月ごとに進行します。

支払期日 時効期間の満了の見込み
最も古い未払の月 当該月の支払期日 支払期日から5年を経過した時
その翌月 翌月の支払期日 同様に順次進行します
直近の月 直近の支払期日 まだ相当の期間が残っています

したがって、「何年前まで請求できるか」という問いに対しては、原則として、請求の時点から遡って5年分ということになります。もっとも、承認その他の事由により時効が更新されている場合には、これより古い分についても請求し得ます。

承認による更新

時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始めるとされています(民法第152条第1項)。会社が未払の報酬について支払を認める発言をしていた場合や、一部の入金があった場合には、承認と評価される余地があります。

承認に当たり得る行為 記録の方法
未払額を認める書面の交付 書面を保管します
支払う旨の発言 電子メール、面談の記録
一部の入金 預金通帳
計算書類における未払の計上 計算書類の閲覧(会社法第442条第3項)
支払の猶予の求め 会社からの書面

特に、計算書類に未払役員報酬として計上されている場合には、会社が債務として認識していることを示す有力な資料となります。毎期の計上が続いていれば、その都度承認があったと主張し得る余地があります。

使用人としての賃金との違い

使用人としての地位を併有している場合、未払の対象が役員報酬か使用人としての賃金かにより、適用される規律が異なります。賃金の請求権の消滅時効については、労働基準法第115条に定めが置かれています。

したがって、報酬と給与が区分されている場合には、それぞれについて時効を管理する必要があります。区分がされていない場合には、まず区分の有無を確認することになります。源泉徴収票及び給与の明細書における記載を確認します。

時効を止める手段

手段 効果 根拠
裁判上の請求 その事由が終了するまでの間、完成が猶予されます。権利が確定したときは更新されます 民法第147条第1項、第2項
催告 催告の時から6か月を経過するまでの間、完成が猶予されます 民法第150条第1項
協議を行う旨の書面による合意 原則として1年、完成が猶予されます 民法第151条第1項
承認 時効が更新され、新たに進行を始めます 民法第152条第1項

催告は繰り返しても重ねて猶予の効果を生じません(民法第150条第2項)。また、催告による猶予の間にされた協議の合意及びその逆は、猶予の効力を有しないとされています(民法第151条第3項)。手段の選択には注意が必要です。

在任中に請求することの難しさ

在任中は、会社との関係を維持したいという事情から、請求をためらうことが多くあります。しかし、その間も時効は進行します。

穏当な手段 内容
未払額の確認の求め 金額の確認を求める形で書面を送ります
支払計画の相談 支払の時期について相談する形を採ります
計算書類の確認 計上の有無を確認します
取締役会での発言 議事録への記載を求めます
一部の入金の受領 受領により承認と評価される余地があります

いずれも、会社との関係を決定的に悪化させずに、承認に当たり得る応答を得ることを目的とするものです。

役員退職慰労金への影響

報酬が支払われていない期間が続くと、役員退職慰労金の算定において、退任時の月額報酬が低いものとして扱われるおそれがあります。役員退職慰労金の算定は、退任時の月額報酬を基礎とすることが多いためです。

決議された役員報酬額が存在し、これが未払となっているにすぎないことを明らかにしておくことにより、算定の基礎を本来の額とすべき旨を主張し得ます。

案件で確認すべき事項

番号 確認事項 確認の方法
1 報酬の額を定めた決議の有無及び内容 株主総会議事録、取締役会議事録
2 支払期日の定め 決議の内容、従前の支給の実際
3 最後に報酬が支払われた年月 預金通帳、源泉徴収票
4 未払となっている期間及び累計の額 振込の記録
5 一部の入金の有無及び年月日 預金通帳
6 会社が未払を認める発言又は書面の有無 電子メール、書面
7 計算書類における未払の計上の有無 計算書類
8 使用人としての地位の併有の有無 辞令、給与の明細書
9 これまでに行った請求の有無 書面の控え
10 最も古い未払からの経過期間 振込の記録

弁護士にご相談いただく意味

未払の報酬は、月ごとに時効が進行するため、対応が遅れるほど請求できる範囲が狭まります。他方、会社の承認に当たり得る行為があれば、より古い分についても請求し得ます。過去のやり取りを整理し、承認の有無を確認する作業が有益です。

弁護士は、役員及び元役員の代理人として、未払額の確定、承認の有無の検討、会社に対する請求及び債務の承認の取得、計算書類等の閲覧謄写の請求、消滅時効の管理及び完成猶予の措置、役員退職慰労金の請求との調整、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。

よくあるご質問

質問1 10年前からの未払があります。全部請求できますか。

原則として、請求の時点から遡って5年分となります。もっとも、会社の承認があった場合には、より古い分についても請求し得る余地があります。

質問2 会社が「必ず払う」と言っていました。

債務の承認と評価される場合には、その時から新たに時効が進行します(民法第152条第1項)。発言の時期及び内容の記録が重要となります。

質問3 毎年の決算書に未払として載っています。

会社が債務として認識していることを示す有力な資料となります。計算書類等の閲覧謄写を請求して確認することが考えられます。

質問4 在任中ですが請求すべきでしょうか。

時効は在任中も進行します。未払額の確認を求める、支払の時期を相談するといった穏当な方法により、承認に当たり得る応答を得ることを検討してください。

質問5 役員退職慰労金と一緒に請求すべきですか。

根拠及び時効の起算点が異なりますので、区別して整理する必要があります。請求の順序については個別にご相談ください。

本記事における非開示事項について

承認を得るための働きかけの方法及び時期、在任中に採る手段の選択、役員退職慰労金の請求との調整は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • ご相談は事前予約制です

ご相談に際しましては、登記事項証明書、株主総会議事録の写し、預金通帳及び源泉徴収票、計算書類の写し、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。

弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。

本記事の根拠条文

会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第330条(株式会社と役員との関係)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第371条第2項・第3項(取締役会議事録の閲覧謄写)、第387条第1項(監査役の報酬等)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)

民法 第147条第1項・第2項(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)、第150条第1項・第2項(催告による時効の完成猶予)、第151条第1項・第3項(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第152条第1項(承認による時効の更新)、第166条第1項(債権等の消滅時効)、第648条第1項(受任者の報酬)

労働基準法 第115条(時効)

判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、及び株主総会の決議によって具体的に定められた役員報酬額を役員の同意なく一方的に減額することができないことについては、判例法理によります。承認の有無は、事実関係に照らし、個別の事案ごとに判断されます。

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