譲渡の後に代表者を退いた場合の支給の時期

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譲渡の後に代表者を退いた場合の支給の時期に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において退任の時期と決議の時期との関係及び引継ぎの期間の備えをご説明します。契約書の定めの有無による違いは別のページをご参照ください。
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譲渡の後に代表者を退いた場合の支給の時期
株式の譲渡に際して、譲渡人である経営者が直ちに退任せず、引継ぎのために一定期間、代表取締役又は取締役として残るという形が採られることがあります。この場合、役員退職慰労金がいつ支給されるのかが問題となります。引継ぎが終わった段階では会社の支配は既に買主に移っていますので、支給の実現は相手方の対応に左右されることになります。本記事では、支払を求める側の元役員に向けて、この点を整理します。
結論 契約における定めが決定的です
役員退職慰労金は、原則として、定款の定め又は株主総会の決議によって初めて具体的な請求権となります(会社法第361条第1項)。譲渡の後は、買主が議決権の多数を有していますので、決議を行うかどうかは買主の判断によることになります。
したがって、支給の時期を確実にするためには、株式譲渡契約その他の合意において、支給の時期を具体的に定めておくことが決定的に重要となります。
| 定め方 | 内容 | 確実性 |
|---|---|---|
| 譲渡の実行前に支給する | 実行の前提条件として支給を受けます | 最も確実です |
| 実行と同時に支給する | 実行日に決議及び支払を行います | 確実性が高いといえます |
| 退任時に支給する | 引継ぎの終了後に決議及び支払を行います | 買主の対応に左右されます |
| 時期の定めがない | 買主の判断によることになります | 実現が不確実です |
退任の時期と決議の時期
実務上、次の三つの時点が問題となります。
| 時点 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 株式譲渡の実行 | 株式の移転及び代金の支払 | この時点で会社の支配が移ります |
| 代表権の喪失 | 代表取締役を退き、取締役として残る | 役員退職慰労金の対象期間に影響します |
| 取締役の退任 | 役員としての地位を離れる | この時点が退任として扱われるのが通例です |
役員退職慰労金の支給の対象となる「退任」がいずれの時点を指すかは、契約及び支給規程の定めによります。代表権を退いた時点で支給し、その後の取締役としての在任期間について別に扱うという定め方もあり得ます。
引継ぎ期間中に備えるべき事項
引継ぎのために残っている期間は、まだ会社の内部にいる立場ですので、次の備えを行うことができます。
| 備え | 内容 |
|---|---|
| 支給規程の写しの確保 | 退任後は入手が困難になります |
| 株主総会議事録の写しの確保 | 報酬の決議及び過去の支給の記録 |
| 役員報酬額が分かる資料の確保 | 源泉徴収票、給与の明細書 |
| 過去の支給実績の記録 | 計算書類、社内の記録 |
| 買主との書面によるやり取り | 支給の時期についての確認 |
| 取締役会での確認 | 議事録への記載を求めます |
退任した後は、会社の資料に接することができなくなります。在任中に必要な資料の写しを確保しておくことが、後の請求を大きく容易にします。
支給が遅れる場合の対応
| 会社又は買主の説明 | 対応 |
|---|---|
| 次の定時株主総会で決議する | 時期を書面で確認し、上程されたかを議事録により確認します |
| 引継ぎの状況を見てから判断する | 契約に条件の定めがあるかを確認します |
| 買収後の業績が想定を下回っている | 支給が業績を条件とする定めであるかを確認します |
| 表明保証違反があった | 主張の内容及び根拠の特定を求めます |
| 応答がない | 催告のうえ、買主に対する契約上の請求を検討します |
買主が表明保証違反その他の理由を挙げて支給を留保する場合があります。この場合、役員退職慰労金の請求と、表明保証違反の主張とは別個の問題ですので、これらを切り分けたうえで対応することになります。
買主に対する請求
株式譲渡契約に、買主が決議を行わせる義務を定める条項が置かれている場合には、その不履行として、履行の請求又は損害賠償の請求を検討することができます(民法第415条第1項)。
また、契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有するとされています(民法第537条第1項)。退任役員が契約の当事者でない場合には、この構成を検討する余地があります。
消滅時効
債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します(民法第166条第1項)。
譲渡の後は買主との関係を維持したいという事情から請求を控えることが多く、その間に年数が経過する事案が見られます。株式譲渡代金の受領が完了している場合には、関係を維持する必要性は低下しますので、早期に請求に移ることが可能です。
これから譲渡を検討される方々へ
| 定めるべき事項 | 内容 |
|---|---|
| 支給の時期 | 実行前、実行時、退任時のいずれかを明記します |
| 支給額 | 具体的な金額を記載します |
| 決議の実施 | 買主が決議を行わせる義務を明記します |
| 不履行の効果 | 違約金又は損害賠償の定めを置きます |
| 引継ぎの期間 | 期間及び終了の要件を明確にします |
| 引継ぎ期間中の報酬 | 額及び支払の方法を定めます |
最も確実であるのは、譲渡の実行の前に支給を受けることです。実行後は会社の支配が買主に移りますので、支給の実現が相手方の意向に左右されることになります。
案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 株式譲渡契約における役員退職慰労金に関する条項 | 契約書 |
| 2 | 支給の時期に関する定めの有無 | 契約書 |
| 3 | 支給を条件とする定めの有無 | 契約書 |
| 4 | 譲渡の実行の年月日 | 契約書、登記事項証明書 |
| 5 | 代表権の喪失及び退任の各年月日 | 登記事項証明書 |
| 6 | 引継ぎ期間中の報酬の額 | 源泉徴収票、契約書 |
| 7 | 退任後の株主総会の開催状況及び議題 | 株主総会議事録 |
| 8 | 買主が支給を留保する理由 | 買主からの書面 |
| 9 | 会社の役員退職慰労金支給規程の有無 | 規程の写し |
| 10 | 退任からの経過期間 | 登記事項証明書 |
弁護士にご相談いただく意味
譲渡の後の退任という場面では、会社に対する請求と、買主に対する契約上の請求という二つの道筋があります。いずれを主とするかは、契約の定め及び資料の状況により異なります。また、在任中に確保しておくべき資料があり、退任前の準備が結果を左右します。
弁護士は、元役員の代理人として、株式譲渡契約の精査、支給の時期に関する主張の組み立て、会社及び買主に対する請求、在任中の資料の確保に関する助言、消滅時効の管理、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。譲渡を検討されている段階でのご相談もお受けしています。
よくあるご質問
質問1 引継ぎのために残っています。今のうちに何をすべきですか。
支給規程、株主総会議事録、役員報酬額が分かる資料の写しを確保しておくことをお勧めいたします。退任後は入手が困難になります。
質問2 契約に支給の時期が書かれていません。
買主の判断によることになりますので、書面により時期の確認を求めることが第一歩となります。応答がない場合には、契約上の請求の構成を検討します。
質問3 買主が表明保証違反を理由に支給を留保しています。
役員退職慰労金の請求と表明保証違反の主張とは別個の問題です。主張の内容及び根拠の特定を求めたうえで、切り分けて対応することになります。
質問4 代表権を退いた時点で支給されるべきですか。
契約及び支給規程の定めによります。代表権の喪失の時点と取締役の退任の時点のいずれを基準とするかを確認する必要があります。
質問5 これから譲渡します。何に注意すべきですか。
支給の時期、金額、決議を行わせる義務、不履行の効果を具体的に定めることが重要です。可能であれば、譲渡の実行の前に支給を受けることをご検討ください。
本記事における非開示事項について
在任中に確保すべき資料の選択、会社及び買主に対する請求の順序、請求の時期の判断は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。
- 電話番号 03-6435-8418
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、株式譲渡契約書の写し、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、株主総会議事録の写し、源泉徴収票、買主との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第296条第2項(臨時株主総会の招集)、第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)、第915条第1項(変更の登記)
民法 第147条第1項(裁判上の請求等による時効の完成猶予)、第150条第1項(催告による時効の完成猶予)、第166条第1項(債権等の消滅時効)、第415条第1項(債務不履行による損害賠償)、第537条第1項・第3項(第三者のためにする契約)、第541条(催告による解除)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれることについては、判例法理によります。支給の対象となる退任の時点及び契約上の義務の内容は、契約書及び支給規程の文言に照らし、個別の事案ごとに判断されます。
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