時効が迫っている場合に今日できること

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時効の完成が迫った場面で当日に採る行動に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において催告の書面を直ちに発送し6か月の間に進める段取りをご説明します。起算点の考え方は別のページをご参照ください。
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時効が迫っている場合に今日できること
役員退職慰労金の消滅時効の完成が迫っている場合には、本日中に、会社に対して履行を求める催告の書面を発送することが第一の対応となります。催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は時効が完成いたしませんので(民法第150条第1項)、その間に裁判上の手続を準備する時間を確保することができます。もっとも、催告による完成猶予は繰り返して用いることができませんので、猶予されている6箇月の間に次の手続へ移行する必要があります。本記事では、支払を求める側の元役員に向けて、時効の完成が迫っている場面で採り得る対応を整理いたします。
結論 本日中に催告の書面を発送してください
時効の完成が迫っている場面では、資料が揃っていない段階であっても、まず催告の書面を発送することが優先されます。催告は、権利の内容を特定して履行を求める意思を相手方に伝える行為であり、書面の体裁が整っていることまでは要件とされていません。
発送の方法は、内容証明郵便に配達証明を付する方法によることをお勧めいたします。催告の事実及び到達の年月日を後日立証する必要が生ずるためです。
| 本日中に行うこと | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 催告の書面の発送 | 会社に対し、役員退職慰労金の支払を求める旨を書面で通知します | 民法第150条第1項 |
| 配達証明の付加 | 到達の年月日を証拠として残します | 立証のためです |
| 宛先の確認 | 登記事項証明書により本店所在地及び代表者を確認します | 到達の確保のためです |
| 控えの保存 | 謄本及び受領証を保存します | 立証のためです |
会社の本店所在地が移転している場合には、旧所在地に宛てた書面が到達しない場合がありますので、発送の前に登記事項証明書により現在の本店所在地を確認することが必要です。
消滅時効の期間と起算点の確認
債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅いたします(民法第166条第1項)。役員退職慰労金の請求権についても、この規定が適用されます。
もっとも、起算点をいつと考えるかは、事案により異なります。役員退職慰労金は、定款の定め又は株主総会の決議によって初めて具体的な請求権となると解されていますので(会社法第361条第1項)、決議がされている場合と決議がされていない場合とで、起算点の考え方が異なる余地があります。
| 場面 | 起算点として主張され得る時点 |
|---|---|
| 株主総会の決議があり支給時期の定めがある場合 | 定められた支給の時期 |
| 株主総会の決議はあるが支給時期の定めがない場合 | 決議の時又は請求をした時 |
| 取締役会への一任の決議がされた場合 | 取締役会において具体的な金額が決定された時 |
| 株主総会の決議がされていない場合 | 請求権が具体化していないとして時効が進行していないと解する余地があります |
| 分割払の合意がある場合 | 各回の弁済期がそれぞれ起算点となる余地があります |
起算点の判断は請求の可否を左右いたしますので、期間が経過しているように見える場合であっても、直ちに断念されないことをお勧めいたします。
催告による時効の完成猶予
催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は完成いたしません(民法第150条第1項)。これを催告による時効の完成猶予と申します。時効の完成が目前に迫っている場面において、最も速やかに実行することができる手段です。
ただし、催告によって時効の完成が猶予されている間に再度の催告をしても、その催告は時効の完成猶予の効力を有しないものとされています(民法第150条第2項)。したがって、催告を繰り返すことによって猶予を積み重ねることはできません。猶予されている6箇月の間に、裁判上の手続その他の措置へ移行する必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 催告の時から6箇月を経過するまで時効が完成しません |
| 方式 | 方式の定めはありませんが、書面によることが相当です |
| 起算 | 催告が相手方に到達した時から起算されます |
| 再度の催告 | 猶予されている間の再度の催告には効力がありません |
| 猶予の性質 | 時効期間が新たに進行し直すものではありません |
協議を行う旨の合意による時効の完成猶予
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、一定の期間、時効は完成いたしません(民法第151条第1項)。会社が協議に応ずる姿勢を示している場合には、この合意を書面により取り交わすことによって、交渉の時間を確保することができます。
もっとも、この合意により時効の完成が猶予される期間には限度が定められており、再度の合意によって猶予を延長する場合にも通算の上限があります。また、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた合意は効力を有しないものとされていますので(民法第151条第3項)、催告と合意の順序には注意を要します。
会社が協議に応じない場合には、この方法を用いることはできません。その場合には、催告を行ったうえで裁判上の手続へ移行することになります。
承認による時効の更新
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始めます(民法第152条第1項)。承認は、権利の存在を認識している旨を相手方に表示する行為です。承認があった場合には、時効期間が新たに進行し直しますので、催告による猶予よりも効果が大きいといえます。
会社の担当者又は代表者が、支払うべき金額があること自体は認める発言をしている場合には、これを書面により確認することを検討いたします。一部の弁済を受けることも、残額についての承認と評価される余地があります。
| 承認と評価され得る事情 | 確保すべき資料 |
|---|---|
| 支払を認める旨の書面又は電子メール | 原本又は印刷したもの |
| 分割払の申入れ | 書面、電子メール |
| 一部の弁済 | 振込の記録、領収の記録 |
| 支払の時期を延ばしてほしい旨の申入れ | 書面、電子メール |
| 債務の残額を記載した書面の交付 | 当該書面 |
ただし、会社の側で承認に当たる行為を行う権限を有する者が誰であるかが問題となる場合がありますので、代表者の名義による書面を得ることが望ましいといえます。
6か月の間に行うべきこと
催告により猶予されている6箇月の間に、裁判上の請求その他の措置へ移行する必要があります。裁判上の請求、支払督促の申立て、民事調停の申立て、訴え提起前の和解の申立て等がされた場合には、その事由が終了するまでの間は時効が完成せず、確定判決又はこれと同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効が更新されます(民法第147条第1項・第2項)。
| 期間 | 行うこと |
|---|---|
| 第1週から第2週まで | 登記事項証明書、支給規程、株主総会議事録、源泉徴収票等の収集 |
| 第3週から第6週まで | 請求の根拠及び金額の整理、会社との交渉の可否の見極め |
| 第2月から第3月まで | 交渉が進まない場合の申立ての方針の決定 |
| 第4月から第5月まで | 訴状その他の申立書の起案及び証拠の整理 |
| 第6月 | 裁判所への提出。余裕をもって行います |
資料が不足している場合には、株主総会議事録の閲覧謄写の請求(会社法第318条第4項)及び計算書類等の閲覧の請求(会社法第442条第3項)を併せて検討いたします。もっとも、資料の収集を待って申立てが遅れることのないよう、期間の管理を優先いたします。
起算点に争いがある場合
時効期間が既に経過しているように見える場合であっても、起算点の考え方によっては、なお請求が可能である余地があります。役員退職慰労金の請求権は、定款の定め又は株主総会の決議によって具体化するものと解されていますので、決議がされていない事案においては、そもそも時効が進行を開始していないと主張する余地があります。
また、分割払の合意がある事案では、各回の支払ごとに弁済期が到来いたしますので、未到来の回については時効が進行しておらず、既に到来した回についても回ごとに期間を検討することになります。
他方で、時効の完成が争われる場面では、会社の側から時効の援用がされることになります。援用がされるまでは請求権が消滅したものとして扱われるものではありませんので、期間が経過しているように見える場合であっても、まず催告を行い、会社の対応を確認することに意味があります。
案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 退任の年月日 | 登記事項証明書 |
| 2 | 株主総会の決議の有無及び年月日 | 株主総会議事録 |
| 3 | 支給の時期に関する定めの有無 | 議事録、支給規程 |
| 4 | 取締役会への一任の決議の有無 | 株主総会議事録 |
| 5 | 取締役会における金額の決定の有無 | 取締役会議事録 |
| 6 | 過去に催告を行った年月日 | 内容証明郵便の謄本、配達証明 |
| 7 | 会社が支払を認める発言をした事実 | 書面、電子メール、録音 |
| 8 | 一部の弁済を受けた事実 | 預金口座の記録 |
| 9 | 分割払の合意の有無及び各回の弁済期 | 合意書 |
| 10 | 会社の現在の本店所在地及び代表者 | 登記事項証明書 |
弁護士にご相談いただく意味
時効の完成が迫っている場面では、判断に費やすことができる時間が限られています。起算点の見極め、催告と協議を行う旨の合意との順序、猶予されている期間内に採るべき手続の選択は、いずれも期間の管理と結びついていますので、誤りが生じた場合に取り返しがつかないことがあります。
弁護士は、元役員の代理人として、起算点の検討、催告の書面の作成及び発送、協議を行う旨の合意の取り交わし、承認に当たる事実の確保、資料の収集、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。期間が経過しているように見える場合であっても、なお検討の余地がある場合がありますので、断念される前にご相談ください。
よくあるご質問
質問1 退任から5年以上が経過しています。もう請求できませんか。
断定はできません。株主総会の決議がされていない場合には請求権が具体化していないと解する余地があり、起算点についても争いが生じます。まず経緯を整理されることをお勧めいたします。
質問2 電子メールで支払を求めれば催告になりますか。
催告に方式の定めはありませんので、電子メールによる場合であっても催告に当たる余地があります。もっとも、到達の年月日の立証のため、内容証明郵便に配達証明を付する方法によることをお勧めいたします。
質問3 催告を何度も繰り返せば時効を止め続けられますか。
できません。催告により時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、完成猶予の効力を有しないものとされています(民法第150条第2項)。
質問4 会社が話合いに応じると言っています。
協議を行う旨の合意を書面により取り交わすことをご検討ください(民法第151条第1項)。ただし猶予される期間には限度がありますので、並行して裁判上の手続の準備を進めることが相当です。
質問5 会社が支払を認める書面を出してくれました。
承認に当たる場合には、その時から時効が新たに進行を始めます(民法第152条第1項)。当該書面は必ず保存してください。
本記事における非開示事項について
起算点に関する主張の組み立て、催告と協議を行う旨の合意との使い分け、猶予されている期間内における手続の選択、承認に当たる事実の引き出し方は、決議の有無、支給規程の内容、従前の交渉の経緯、会社の資力等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。
- 電話番号 03-6435-8418
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、役員退職慰労金支給規程の写し、株主総会議事録の写し、これまでに会社へ送付した書面の控え、会社との往復の電子メール、源泉徴収票をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第147条第1項・第2項(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)、第150条第1項・第2項(催告による時効の完成猶予)、第151条第1項・第3項(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第152条第1項(承認による時効の更新)、第166条第1項(債権等の消滅時効)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれること、及び定款の定め又は株主総会の決議によって具体的な請求権が発生することについては、判例法理によります。消滅時効の起算点は、決議の有無、支給の時期に関する定めの内容等に照らし、個別の事案ごとに判断されます。
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