催告及び協議の合意により時効の完成を延ばす方法

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催告及び協議の合意による猶予に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において6か月と1年という2つの猶予の仕組みと書面の要件をご説明します。承認による更新の効果は別のページをご参照ください。
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催告及び協議の合意により時効の完成を延ばす方法
役員退職慰労金の請求を検討している間に、時効期間の満了が近づいていることが判明する場合があります。この段階で採り得る手段として、催告と、協議を行う旨の合意があります。いずれも時効の完成を猶予するものですが、効果の内容と期間が異なり、併用にも制限があります。本記事では、支払を求める側の元役員及びそのご遺族に向けて、両者の仕組みを整理します。
結論 催告は6か月、協議の合意は最長1年の猶予です
| 手段 | 猶予の期間 | 方式 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 催告 | 催告の時から6か月 | 方式の定めはありません | 民法第150条第1項 |
| 協議を行う旨の合意 | 原則として合意の時から1年 | 書面又は電磁的記録によります | 民法第151条第1項、第4項 |
いずれも、時効を更新するものではなく、完成を猶予するにとどまります。猶予の期間が経過すれば、時効は完成し得ます。したがって、猶予により得られた期間は、次の手続に進むための準備の期間と位置付けるべきものです。
催告の仕組み
催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しないとされています(民法第150条第1項)。催告には方式の定めがありませんが、到達の事実及び時期を立証するため、配達証明付きの内容証明郵便によることが通例です。
重要な制限として、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、猶予の効力を有しないとされています(民法第150条第2項)。すなわち、催告を繰り返して猶予を積み重ねることはできません。
| 催告に記載すべき事項 | 内容 |
|---|---|
| 当事者の特定 | 差出人及び宛先(会社の商号及び本店の所在地) |
| 債権の特定 | 役員退職慰労金であること、退任の年月日 |
| 請求の趣旨 | 支払を求める旨。金額が確定していない場合はその旨 |
| 期限 | 支払を求める期限 |
| 回答の求め | 支給しない場合はその理由を明らかにするよう求める旨 |
協議を行う旨の合意の仕組み
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は完成しないとされています(民法第151条第1項)。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | その合意があった時から1年を経過した時 |
| 第2号 | その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限ります)を定めたときは、その期間を経過した時 |
| 第3号 | 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月を経過した時 |
したがって、期間を定めずに合意した場合には1年、期間を定めた場合にはその期間、協議の続行を拒絶する通知がされた場合にはその時から6か月が、それぞれ猶予の限度となります。
協議の合意の繰り返し
時効の完成が猶予されている間にされた再度の合意も、猶予の効力を有します(民法第151条第2項本文)。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができないとされています(同項ただし書)。
すなわち、協議の合意は繰り返すことができますが、通算して5年が上限となります。この点は、催告が繰り返せないことと大きく異なります。
| 比較 | 催告 | 協議の合意 |
|---|---|---|
| 繰り返し | できません | できます(通算5年が上限) |
| 相手方の同意 | 不要です | 必要です |
| 方式 | 定めはありません | 書面又は電磁的記録によります |
| 1回の期間 | 6か月 | 原則1年 |
協議の合意は相手方の同意を要しますので、会社が応じない場合には用いることができません。会社が交渉に応じる姿勢を示している場合には、有力な手段となります。
催告と協議の合意を併用できない仕組み
催告によって時効の完成が猶予されている間にされた協議の合意は、猶予の効力を有しないとされています。また、協議の合意により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とされています(民法第151条第3項)。
すなわち、催告と協議の合意を交互に用いて猶予を積み重ねることはできません。いずれか一方を選択することになります。
| 状況 | 選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 会社が交渉に応じている | 協議の合意 | 1年の猶予を得られ、繰り返すこともできます |
| 会社が応答しない | 催告 | 相手方の同意を要しません |
| 会社が支払を明確に拒んでいる | 催告のうえ訴訟の提起 | 協議による解決が見込めません |
| 時効の満了が目前である | 直ちに訴訟の提起を検討 | 猶予に頼らず確実な手段を採ります |
書面及び電磁的記録の要件
協議の合意は、書面によることを要します(民法第151条第1項)。合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます(同条第4項)。したがって、電子メールのやり取りにより合意の内容が記録されている場合には、要件を満たし得ます。
もっとも、後日の争いを避けるため、次の事項を明記した書面を取り交わすことが望ましいといえます。
| 記載すべき事項 | 内容 |
|---|---|
| 当事者 | 元役員及び会社の表示 |
| 対象となる権利 | 役員退職慰労金の請求権であること |
| 協議を行う旨 | 当該権利について協議を行うことの合意 |
| 協議の期間 | 期間を定める場合はその期間(1年未満) |
| 合意の年月日 | 猶予の起算点となります |
| 署名又は記名押印 | 双方が行います |
確実な手段としての裁判上の請求
裁判上の請求がある場合には、その事由が終了するまでの間は、時効は完成しないとされています(民法第147条第1項)。そして、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、その事由が終了した時から新たに進行を始めます(同条第2項)。
猶予にとどまる催告及び協議の合意と異なり、裁判上の請求は更新につながります。時効の管理の観点からは、最も確実な手段です。時効の満了が目前に迫っている場合には、猶予の手段に頼らず、訴訟の提起を優先すべき場面があります。
実務における使い分け
| 段階 | 行うこと | 目的 |
|---|---|---|
| 第1 | 時効期間の満了の見込みを把握します | 残された時間を明確にします |
| 第2 | 会社の姿勢を確認します | 協議の合意が可能かを判断します |
| 第3 | 協議に応じる場合は書面による合意を締結します | 1年の猶予を得ます |
| 第4 | 応答がない場合は催告を行います | 6か月の猶予を得ます |
| 第5 | 猶予の期間内に資料を整え、訴訟の準備を進めます | 次の手続への移行を確実にします |
| 第6 | 猶予の期間の満了前に訴訟を提起します | 時効の更新につなげます |
案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 退任の年月日 | 登記事項証明書 |
| 2 | 株主総会の決議の有無及び年月日 | 株主総会議事録 |
| 3 | 時効の起算点についての考え方 | 決議の有無及び会社の対応により検討します |
| 4 | これまでに行った催告の有無及び時期 | 内容証明郵便の控え |
| 5 | 会社が支払を認める発言をした時期 | 電子メール、書面 |
| 6 | 一部の入金の有無及び年月日 | 預金通帳 |
| 7 | 協議を行う旨の合意の有無 | 合意書、電子メール |
| 8 | 会社が協議に応じる姿勢を示しているか | 往復の書面 |
| 9 | 訴訟の提起に必要な資料の準備状況 | 手元の資料の確認 |
| 10 | 時効期間の満了の見込み | 上記を踏まえた算出 |
弁護士にご相談いただく意味
時効の管理は、判断を誤ると回復することができません。催告と協議の合意は併用できず、催告は繰り返せません。この仕組みを踏まえずに手段を選ぶと、意図した猶予が得られないまま時効が完成することになりかねません。
弁護士は、元役員の代理人として、時効期間の満了の見込みの把握、催告の書面の作成及び送付、協議を行う旨の合意の締結、会社の対応に応じた手段の選択、資料の収集及び訴訟の準備、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。時効の満了が迫っている場合には、速やかにご相談ください。
よくあるご質問
質問1 催告を毎年送っていれば時効を止められますか。
できません。催告によって猶予されている間にされた再度の催告は、猶予の効力を有しないとされています(民法第150条第2項)。
質問2 協議の合意は何度でもできますか。
繰り返すことができますが、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができないとされています(民法第151条第2項ただし書)。
質問3 電子メールでの合意でも有効ですか。
合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます(民法第151条第4項)。もっとも、後日の争いを避けるため、書面を取り交わすことが望ましいといえます。
質問4 催告をした後に協議の合意をしてもよいですか。
催告によって猶予されている間にされた協議の合意は、猶予の効力を有しないとされています(民法第151条第3項)。いずれか一方を選択することになります。
質問5 時効まであと1か月です。どうすればよいですか。
猶予の手段に頼らず、訴訟の提起を優先すべき場面です。速やかにご相談いただくことをお勧めいたします。
本記事における非開示事項について
猶予の手段の選択及び時期の判断、訴訟の提起に移る時期の見極め、会社の姿勢に応じた進め方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。
- 電話番号 03-6435-8418
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、株主総会議事録の写し、これまでに送付した書面の控え、預金通帳、会社との往復の書面をお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第361条第1項(取締役の報酬等)
民法 第147条第1項・第2項(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)、第148条第1項・第2項(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)、第150条第1項・第2項(催告による時効の完成猶予)、第151条第1項・第2項・第3項・第4項(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第152条第1項(承認による時効の更新)、第166条第1項(債権等の消滅時効)、第169条第1項(判決で確定した権利の消滅時効)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれることについては、判例法理によります。時効の起算点は、決議の有無及び会社の対応に照らし、個別の事案ごとに判断されます。
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