会社が支払を認める発言をした場合の効果

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会社が支払を認める発言をした場合の効果に関するメインのページです。本ページは、役員退職慰労金の請求において承認により時効が更新され新たに進行を始める仕組みをご説明します。催告による猶予の手当ては別のページをご参照ください。
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会社が支払を認める発言をした場合の効果
「今は資金がないが、必ず支払います」「金額を計算しているところです」。会社からこのような説明を受けたまま年数が経過している事案は少なくありません。これらの発言は、単なる引き延ばしと見えますが、時効との関係では支払を求める側に有利に働く可能性があります。本記事では、支払を求める側の元役員及びそのご遺族に向けて、承認の効果と、これをどのように記録に残すかを整理します。
結論 承認があれば時効は更新され、新たに進行を始めます
時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始めるとされています(民法第152条第1項)。これを時効の更新といいます。
更新は、猶予とは効果が異なります。催告及び協議を行う旨の合意は、一定の期間について完成を猶予するにとどまりますが、承認があった場合には、それまでの経過期間がすべて意味を失い、承認の時から改めて時効期間が進行することになります。
| 制度 | 効果 | 根拠 |
|---|---|---|
| 完成猶予 | 一定の期間、時効は完成しません。経過期間は失われません | 民法第147条第1項、第150条第1項、第151条第1項 |
| 更新 | それまでの経過期間が意味を失い、新たに進行を始めます | 民法第147条第2項、第152条第1項 |
したがって、会社の発言が承認に当たると認められれば、退任から長期間が経過している事案であっても、請求できる余地が生じます。
承認に当たり得る行為の類型
| 類型 | 内容 | 記録の方法 |
|---|---|---|
| 支払う旨の発言 | 「必ず支払う」「支払う意思はある」といった発言 | 電子メール、書面、面談の記録 |
| 金額の提示 | 支給額を提示する | 提示の書面、電子メール |
| 算定の説明 | 算定の過程を説明する | 説明の書面、電子メール |
| 一部の入金 | 債務の一部を支払う | 預金通帳 |
| 支払期日の提案 | 支払の時期を提案する | 電子メール、書面 |
| 分割払の提案 | 分割による支払を申し出る | 提案の書面 |
| 計算書類への計上 | 未払金として計上する | 計算書類 |
| 猶予の求め | 支払の猶予を求める | 会社からの書面 |
実務上、最も明確であるのは一部の入金です。金額の多寡にかかわらず、債務の存在を前提とする行為ですので、承認と評価されやすいものです。入金があった場合には、その年月日及び金額を必ず記録に残してください。
承認に当たらないと解される場合
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 債務の存在を争う発言 | 「支払う義務はないが、見舞金として渡す」といった発言 |
| 条件付きの発言 | 「業績が回復すれば検討する」といった、義務の存在を前提としない発言 |
| 一般的な慰労の言葉 | 「長い間ご苦労様でした」といった社交的な発言 |
| 第三者の発言 | 会社の意思を表示する権限のない者による発言 |
発言が承認に当たるかどうかは、その内容及び前後の文脈により判断されます。したがって、発言の一部を切り取るのではなく、やり取り全体を記録に残しておくことが重要です。
承認をした者の権限
会社の債務の承認は、会社の意思表示として行われる必要があります。したがって、発言をした者が会社を代表し、又は会社のために行動する権限を有していたかが問題となり得ます。
| 発言者 | 検討の視点 |
|---|---|
| 代表取締役 | 会社を代表する権限を有します |
| 他の取締役 | 権限の有無を個別に検討します |
| 経理の責任者 | 職務の範囲及び会社の内部の取扱いによります |
| 顧問の税理士 | 会社の代理人としての権限の有無を確認します |
| 会社の代理人である弁護士 | 受任の範囲によります |
代表取締役の発言であれば争いは少なくなります。他方、担当者の発言にとどまる場合には、会社がその者に権限を与えていたかが争点となり得ます。可能であれば、代表取締役からの書面を得ることが確実です。
記録に残す方法
| 方法 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 電子メールによるやり取り | 会社からの返信の中に承認の内容が含まれるようにします | 本文を保存し、印刷等により控えを残します |
| 書面の交付を求める | 未払額を認める旨の書面の交付を求めます | 最も確実な方法です |
| 面談の後の確認の書面 | 面談の内容を書面にまとめ、会社に送付します | 会社が否定しない事実が意味を持ちます |
| 一部の入金の受領 | 入金があった場合には記録します | 受領しても残額を争う旨を明示します |
| 計算書類の確認 | 未払金としての計上を確認します | 会社法第442条第3項によります |
面談で口頭の説明を受けた場合には、その後に「本日お伺いした内容は次のとおりでした」という趣旨の書面又は電子メールを送付しておく方法が有効です。会社がこれに対して異議を述べなかったという事実は、後の主張において意味を持ちます。
会社側から出される反論
| 会社側の反論 | 検討の視点 |
|---|---|
| そのような発言はしていない | 電子メール、書面、面談の記録により立証します |
| 社交辞令にすぎない | やり取り全体の文脈及び具体性を示します |
| 発言者に権限がなかった | 発言者の地位及び会社の内部の取扱いを確認します |
| 債務の存在を認めたものではない | 金額の提示や算定の説明があったことを示します |
| 入金は別の債務に対するものである | 入金の名目及び当時の説明を確認します |
承認を得るための働きかけ
時効が問題となり得る事案では、会社から承認に当たる行為を得ることが、有効な対応となります。もっとも、露骨に時効の更新を目的とすることが伝わると、会社が警戒して応じなくなります。
実務上は、支給額の算定の説明を求める、支払の時期についての見通しを尋ねる、支給規程の適用についての会社の考え方を確認するといった形で、会社の応答を書面により得ていくことになります。応答の中に債務の存在を前提とする記載が含まれれば、承認と評価される余地が生じます。
案件で確認すべき事項
| 番号 | 確認事項 | 確認の方法 |
|---|---|---|
| 1 | 退任の年月日 | 登記事項証明書 |
| 2 | 会社が支払に言及した時期及び内容 | 電子メール、書面、面談の記録 |
| 3 | 発言をした者の地位及び権限 | 登記事項証明書、社内の位置付け |
| 4 | 金額の提示又は算定の説明の有無 | 会社からの書面 |
| 5 | 一部の入金の有無及び年月日 | 預金通帳 |
| 6 | 入金の名目及び当時の説明 | 振込の記録、会社からの連絡 |
| 7 | 計算書類における未払の計上の有無 | 計算書類 |
| 8 | 会社が支払の猶予を求めた事実の有無 | 会社からの書面 |
| 9 | これまでに行った催告の有無 | 内容証明郵便の控え |
| 10 | 最後に承認と評価し得る行為があった時期 | 上記の記録の整理 |
弁護士にご相談いただく意味
会社の発言が承認に当たるかどうかは、内容及び文脈により判断されます。ご自身では単なる引き延ばしと感じられていたやり取りが、法律上は有力な意味を持つことがあります。
弁護士は、元役員の代理人として、これまでのやり取りの整理及び承認の有無の検討、承認を得るための書面の作成及び送付、計算書類等の閲覧謄写の請求、時効の起算点及び更新に関する主張の組み立て、消滅時効の管理及び完成猶予の措置、訴訟その他の裁判所の手続の遂行を行います。過去のやり取りの記録は、削除せずに保存しておいてください。
よくあるご質問
質問1 「必ず払う」と言われました。時効は止まりますか。
債務の承認と評価される場合には、時効が更新され、その時から新たに進行を始めます(民法第152条第1項)。発言の内容及び文脈により判断されますので、記録の有無が重要となります。
質問2 口頭の発言しか残っていません。
面談の後に内容をまとめた書面又は電子メールを送付し、会社が異議を述べなかったという状況を作る方法が考えられます。
質問3 少額の入金がありました。
債務の承認と評価されやすい行為です。入金の年月日及び金額を記録に残してください。受領する場合には、残額を争う旨を明示することが有益です。
質問4 経理の担当者からの説明でした。効果はありますか。
発言者の権限が争点となり得ます。可能であれば、代表取締役からの書面を得ることが確実です。
質問5 承認を得るためにどう働きかければよいですか。
算定の説明や支払の見通しを書面により尋ね、会社の応答を得る方法が考えられます。進め方については個別にご相談ください。
本記事における非開示事項について
承認を得るための働きかけの方法及び時期、やり取りの記録の整理の仕方、会社の反論に応じた主張の組み替え方は、株主構成、機関設計、財務状況、従前の経緯等により異なり、当事務所が実務において蓄積してまいりました知見に属しますので、公開していません。
弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕)では、役員退職慰労金の未払に関するご相談をお受けしています。当事務所は、役員の側の代理人となる案件も、会社の側の代理人となる案件も取り扱っており、この分野に精通していることから当該分野を取り扱っています。
- 電話番号 03-6435-8418
- ご相談は事前予約制です
ご相談に際しましては、登記事項証明書、会社との往復の電子メール及び書面、預金通帳、計算書類の写し、これまでに送付した書面の控えをお持ちください。お手元になくてもご相談をお受けしています。課税関係については税理士にご確認ください。
弁護士費用につきましては、弁護士費用一覧のページをご覧ください。
本記事の根拠条文
会社法 第318条第4項(株主総会議事録の閲覧謄写)、第349条第4項(代表取締役の権限)、第361条第1項(取締役の報酬等)、第442条第3項(計算書類等の閲覧等)
民法 第147条第1項・第2項(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)、第150条第1項・第2項(催告による時効の完成猶予)、第151条第1項(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)、第152条第1項(承認による時効の更新)、第166条第1項(債権等の消滅時効)
判例法理による部分 役員退職慰労金が会社法第361条第1項の報酬等に含まれることについては、判例法理によります。発言が債務の承認に当たるかは、その内容及び前後の文脈に照らし、個別の事案ごとに判断されます。
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